仕事で磨いた技術を社会に還元プロボノで実現した社員の成長
社員のプロフェッショナルスキルを活用した社会貢献活動、「プロボノ」。日本企業で初めて、それを組織的に導入したNEC。同社では2010年からプロボノを取り入れ、複数の社会起業家を支援してきた。金銭的援助ではなく、仕事を通して培ってきた社員のスキルやノウハウを社会起業家に提供することは、人材育成の面でどのようなメリットをもたらすものなのか。同社の事例を通じてみていく。
経験を活かした社会貢献=プロボノ
主に社会人が仕事で培ってきたスキルやノウハウを活かしてボランティアをすることを意味する「プロボノ」。ラテン語で「公共善のために」という意味の「pro bono publico」が語源といわれている。
当社では、2010年から『NEC社会起業塾ビジネスサポーター』という名称で社員がプロボノとして活動できる仕組みを構築。2012年現在、20名の社員が参加している。
近年、世間一般的に社会貢献に対する関心が高まりを見せている。東日本大震災を経験し、この傾向はより強まっている。
こうした社会貢献に対する意識が高まっているのは企業も同じ。多くの企業が社会貢献と連動させた商品やサービスを発表し、消費者から一定の支持を得ていることはご存知のことだろう。
このように、今や社会貢献というキーワードは、ビジネスを行ううえでの1つの重要なポイントになっている。なぜならば、企業の取り組みが消費者に対して強烈なメッセージとなり、企業イメージとなって伝わっていくからだ。そして消費者は受け取ったメッセージを、商品やサービスを購入する際の選択の基準にすることさえある。
当社でもこうした社会の流れを背景に、プロボノの仕組みとは別に、企業としての社会貢献活動に着手してきた。
その代表的な例が、2002年に開始した『NEC社会起業塾』だ。
この取り組みは、「食」「農業」「医療」といった分野で、社会問題の解決をめざすNPOや企業で、若手社会起業家として活躍する人材を支援するものだ。
多くの社会起業家が、これまでにない発想で社会的課題に果敢に取り組む一方、資金不足や経営ノウハウの不足から志半ばで事業継続を断念することも少なくない。
そこでこの塾で、豊富な経験を持つ当社社員やベンチャー企業経営者が若き社会起業家に、アドバイスを行い、事業継続のためのノウハウを教えている。『NEC社会起業塾』では、開始以来、37団体を支援。数々の社会起業家たちが卒業生として巣立っている。
卒業生の中には国内外でその取り組みが高く評価され、安定した活動を行っている団体がある一方で、継続的な支援が必要な団体もある。実は、そのフォローアップ体制を構築することが課題となっていた。また、以前から社会起業家と連携してきた当社では、社員の社会貢献に対する意欲が高く、それを汲み取る受け皿が求められているところでもあった。