Opinion 1 未来研究所に聞く 曖昧な世界を切り開くリーダーシップこそグローバル・マインドセット
IFTF(Institute for the Future、未来研究所)名誉研究員で社会学者のボブ・ヨハンセン博士は、IFTFが毎年発表している「10年予測」を踏まえ、これからのグローバル社会はますます「VUCAな世界」になっていくと予言する。そして、「VUCAな世界」を切り開いていくリーダーシップこそが、グローバル・マインドセットに欠かせないものであると語っている。「VUCAな世界」とは何か、そして未来を創るリーダーシップスキルとはいかなるものなのか。ヨハンセン博士にお話を伺った。
より良い未来を創る力
我々は今、VUCAの世界に生きている。VUCAとは、もともとは米国陸軍大学で教えられている軍事用語で、不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)になっていく世界を意味している。
技術の急速な進化、ますますネットワーク化される世界、気候変動、人口増加、高齢化、貧富差拡大といった要因が、世界を一層移ろいやすく予測不能なものにしていく。
私は、これからの10 年間のVUCAな世界は、これまでになく混乱に満ちたものになると予測している。組織にとっても個人にとっても、大変厳しい時代が加速していくだろう。
厳しい予測は人の不安や不快な気持ちをかき立てる。しかし予測は運命や宿命ではない。予測の役割は、そこから起こりうる事柄やリスクを想定し、それらを回避・対応すべく行動することで、幸せな未来を創っていくことにある。未来からのストーリーは、現在における洞察を刺激し、未来に向けた行動を促すためにある。
VUCAな世界は脅威と機会の両面を併せ持つ。リーダーとは、予測の持つ本来的な価値を正しく理解し、脅威のVUCA(不安定、不確実、複雑さ、曖昧さ)を、「予見→洞察→行動のループ」を通じて、希望の持てる機会のVUCA(ビジョン、理解、明瞭さ、機敏さ)に転換していく人のことをいう(図表1)。そのためのスキルが、次に挙げる「未来を創る10のリーダーシップスキル」なのである。
未来を創る10のリーダーシップスキル
1. 作り手の本能
自分や他人が持っている「ものを作りたい」という本能を引き出す能力。
砂浜で無心に穴を掘る子どもたちのような「作り手としての本能」が、組織や社会の至るところで発揮されるように促すことはリーダーの大切な役割である。混沌とした時代を切り開いていくためには、座り込んで嘆くより、何かをつくり続けることが必要だ。
2. 明瞭に考える力
誰もまだ気づいていない未来の混乱や衝突を見通し、混沌の中でも明瞭さを持って意思疎通をする能力。