人材教育最前線 プロフェッショナル編 考える力と自発性を導き出す 人事が成すべき教育の追求
高い専門性と技術を武器に、四輪・二輪車部品を国内外のメーカーに提供する山田製作所。“世界一級品”のものづくりをめざす同社が求めるのは、“自責で捉え、自ら考え、自ら行動する”人材だ。総務部人事課課長の星野和彦氏は、そんな山田製作所の人事・教育体系をつくり上げてきた中心人物。教育熱心な前社長・現社長とともに独自の教育施策を実行してきた。だが、星野氏は「私自身、まだまだ学ぶべきことがたくさんある」と語る。その言葉には“人事としてありたい姿”を求める揺るぎない信念と、社員への思いが宿っていた。
人事部門として何ができるか何をすべきか
「企業は人なり」を信条に、多彩かつ独自の教育プログラムを展開し、高い技術力と人間力を育てる山田製作所。そんな同社で教育体系の創生に深くかかわってきたのが、総務部人事課課長の星野 和彦 氏だ。同氏は1992年、30歳で山田製作所に中途入社。総務課に配属され、人事を担当することになった。その頃の人事はまだ“課”として組織されておらず、総務課が兼務していた。星野氏は当時をこう振り返る。「前任の人事担当者の退職に伴い採用されました。それまで人事の経験はなく、何もわからない状態で、引き継ぎもそこそこに仕事を任されてしまったのです」さらに会社自体、評価や等級、昇格など人事に関する明確なものもなく、星野氏は何年もかけ、少しずつ制度を構築していった。「山田製作所にとっても私にとっても、全てが初めてのことでした。とにかくやっていくしかないと思い、本や他社の人事制度などを参考にしながら勉強しました。教育も同様です。“教育”と呼べるような、きちんとした体系やプログラムはありませんでした」当初は形を整えるだけで精一杯だったという。しかし、年月を重ねる中で、“この階層にはこの教育”と単に整備するだけで人事の役割が果たせているのか?という疑問が頭をよぎるようになった。「人事のあるべき姿を求め、毎日が試行錯誤の連続でした。それは今なお変わりません」山田製作所がめざす“自ら考え、行動する”人材に育てるために、人事部門として何ができるか、何をすべきか。星野氏が育成施策を考える時、常にこの問いが行動の基準になっているという。
自ら考える習慣の下地を長期新人研修でつくる
“自ら考え、行動する”下地づくりには新人教育がカギを握ると考えた星野氏は、10年ほど前、新入社員研修の体系を見直し、新たなプログラムづくりに着手。研修を受けただけで終わらせないために、なぜその研修が必要なのか目的を明確にし、現場でどう活きるかにフォーカスした。