CASE.1 アクセンチュア リーダーがリーダーから学ぶ 経営トップからマネジャーへ 「私塾」でつなぐ力
「DNAが薄まる」業務拡大に伴い人員が倍増したコンサルティング企業が鋭敏に感じ取った危機。DNAを核に人と人のつながりを取り戻すには――。
「私塾」という場で、リーダーが次のリーダーと語り合うことで縦・横・斜めのコミュニケーション力を培い、アクセンチュアらしさをつないでいく。同社の取り組みを追った。
●背景社長の危機意識
経営コンサルティングをはじめ、テクノロジー・サービスやアウトソーシング・サービスでグローバル展開するアクセンチュア。
同社では4年前から新任マネジャーを対象とする「私塾」が設けられている。ユニークなことに、塾長は社長・副社長および執行役員が中心となって務めている。現在、14名が塾を運営しており、内容も開催頻度も塾長次第──文字通りの「私塾」だ。
部署や階層を超えたつながりを通じ、同社のカルチャーを再認識しながら次世代リーダーが育っていくことがそもそもの狙い。もともと持っている良きカルチャーを継承していくのはもちろん、現場の課題を吸い上げ、より進化させようという意図もある。同時に、現場から離れて学びと成長のきっかけを得る場として参加者のエンゲージメントが高まることにもつながる、との思いから実現に至った。
「背景にあったのは、社員の増加です。10年ほどで約2.5倍に達し、新任マネジャーのおよそ半分は、中途入社の社員が占めるようになりました。人材の多様性が増す一方で、DNAが薄れてしまうという危機感がトップ層にありました。
1962年に当社の前々身、アーサー・アンダーセンが東京事務所を設立して、ちょうど50周年を迎えるタイミングでもありました」。人事部ケイパビリティ・デベロップメントシニア・マネジャーの田中聡史氏はこう語る。
きっかけは程近智代表取締役社長の問題提起だった。「マネジャーは、アクセンチュアの成長エンジンとしてしっかり育っているのか」「会社のカルチャーやDNAは維持されているのか」「経営トップとマネジャー層の距離が遠ざかっているのでは」などの危機意識があったという。
「問題提起を受け、我々が考えたのは『そもそも当社の強み、DNAとは?』『その強みを今後50年間でどう継承し、進化させるか』の2点でした」
私塾の立ち上げは、この2つの命題に向けたアクションだった。従来のトレーニング型の研修では、課題を乗り越えることはできない。階層や部署を超え、新任マネジャーとトップ層が直接、現場を離れて語り合う場が必要だ――。
そんな確信から、2009年、パイロット版「私塾」がスタートした。塾長になったのは、程代表取締役社長自身、それに関戸亮司副社長、江川昌史執行役員である。トップ3名が率いる私塾は社内の関心を集め、試運転的に始まったこのプログラムからさまざまな効果が生まれ、翌年度から、ボードメンバーを巻き込んだ「第1期」が本格スタートしたのである。