人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第12回 『レ・ミゼラブル』
「レ・ミゼラブル」
2012年 英国 監督:トム・フーパー
昨年末に公開された『レ・ミゼラブル』は、日本のみならず世界中で大ヒットした。もともとは革命200周年を記念して、フランスで製作されたミュージカルである。ロンドンで英語版につくり直され、今や世界中で上演されている。それが映画になったと聞いた時、私は興行的に成功しないだろうと思った。映画界はシネコン全盛で、結局は派手なハリウッド映画が観客を集める。社会派エンターテインメントの傑作とはいえ、ビクトル・ユゴー原作の地味な物語を観にいく人が、どれほどいるだろうか。しかし私の予想は外れた。公開されるやいなや、社会現象と言っていいほどの大ヒットになったのである。この映画は、時代のストライクゾーンに向かって直球を投げてきた。それは「挫折と痛みの共有」である。成功した人間に華やかなスポットライトが当たりがちだが、厳しいグローバル競争の中で、実は多くの人が傷ついている。