グローバル調査レポート 第3 回“日本人らしい”グローバル・リーダー育成のススメPDI Ninth House A KORN/FERRY COMPANY
第3回のテーマは、「日本人グローバル・リーダー育成」についてである。元PDIジャパンの社長として10年にも及ぶ日本人リーダーの育成経験を持つケイ・L・コッター氏は、「グローバル・リーダーシップには実はスタンダードがあるが、日本ではあまり教育されていない」と語る。事実、諸外国とのリーダーシップを比べた調査結果を見ると、日本人リーダーの課題が浮かび上がる。では、どうしたらいいのか。コッター氏がデータとともに、具体策を述べる。
1“日本人らしい”グローバル・リーダーとは
グローバル・リーダーと聞いて、どんな人物を思い浮かべるだろうか? 自信に満ち溢れ、リーダーシップを力強く発揮しながら組織の成長を牽引する多国籍企業のCEOたちであろうか?
確かに、グローバル企業の経営層に優れたグローバル・リーダーが多数活躍しているのは事実である。しかし、だからといって日本人を欧米的なグローバル・リーダーに育成するという考えは全くナンセンスである。大事なことは、海外の優秀な人材と張り合おうとするのではなく、日本人の良さを活かし、“日本人らしい”価値を提供しながら求められる成果を出すことではないだろうか? 日本人は日本の文化で、欧米人は欧米の文化で強みを発揮できるように育てられてきた。特に日本は、さまざまな点において他国とは異なるユニークで特別な文化を有する国である。文化の違いを乗り越えるのは容易ではない。私自身、日本においてその違いを経験しているのでよくわかる。
ただ、“日本人らしい”といっても、前提としてグローバル・リーダーシップのスタンダードを身につけておくことは必須である。これは全世界共通のスキルであり、どの国のリーダーも学んでいる基本事項である。ところが、私が見聞きする限り、日本人リーダーはこれを学ぶ機会に恵まれていないようである。自社のトップ人材を海外に送り込みながらも成功できなかったりするのは、この要因が大きいといえよう。
そこで本稿では、異文化において成果を達成する必要のある日本人リーダーを対象に、グローバル・リーダーとして身につけるべき基本要素の一端を紹介したい。
2欧米との比較でわかる日本人リーダーの強みと課題
まずは、現状の日本人リーダーの強みと課題を示しておきたい。私たちPDI Ninth House(以下PDI NH)は世界中で年間何千人ものリーダーに対してアセスメントを実施している。蓄積されたデータの中から日本と欧米のリーダーのアセスメント結果を抽出し、コンピテンシー(行動特性)ごとの平均点を比較した(図表1)。
ここで示された日本人リーダーの強みは、「オープンなコミュニケーションを促す」である。私が接してきた日本人リーダーも総じて傾聴スキルに優れており、私も大いに学ばされた。いわゆる“根回し”などインフォーマルなものも含め、コミュニケーションを重視し、少数意見にも耳を傾けようとする傾向がある。これには、民主的なプロセスを通じて人々を一定の方向に導いていくという強みがある。しかしその一方で、自分の考えだけでは意思決定することをためらう、あるいはスピードが遅くなりがちになるという、ドラスティックな変化を導くうえではマイナス面も包含しうることには注意が必要である。
この他の日本人リーダーの強みとしては、「適応性を示す」「部下を育成する」「部下を動機づける」「人間関係を構築する」などの対人スキルがあり、欧米のリーダーと同等かそれ以上の能力があるという結果が示されている。