OPINION 2 メディアに規定される思考 デメリットの把握がより良いeラーニング活用に
「いつでも、どこでも、何度でも」。そのアクセス性や双方向性の高さから、手軽に利用されるようになったeラーニング。企業教育を大きく飛躍させる可能性がある一方で、Webでの学びにはネットならではの課題もある。その長短を知ることで、eラーニングを真に活用することができるのだ。
便利さの裏に危険もeラーニングの罠
──eラーニングによって、学習の機会はどんどん広がりつつあります。さまざまな教育現場や企業で、いつでもどこでも、しかも何回でも学べる環境が整ってきました。
仲林
好例は何といっても小倉第一病院(46 ページ)の事例です。看護師などの人手不足が著しい医療業界では、人材育成が火急の問題となっています。また、その他職種を含め、医療機関で働く人々の就業時間帯はまちまち。そのうえ常時、不測の事態に備えねばならない。当然ながら一斉研修を実施するのは困難です。
そこで同病院では、全職員を対象に業務内容を学べるeラーニングコースを導入しました。短時間で学習できる内容を工夫するなどした結果、自主的に受講する職員が増えたそう。さらに、2009 年からは新入職員全員にiPadを配付。モバイル・ラーニングを開始しています。
このケースからもわかるように、eラーニングの最大の強みはアクセス性の高さ。いつでもどこでも、さらに何度でも、学習することができます。
──教育を提供する側からの働きかけも可能になっているのでは。
仲林
双方向性も大きな強み。「どの学習者がどのくらい進歩したか?」「この学習者の得意分野、不得意分野は?」「今、何を勉強しているか」。
CD-ROMの教材で勉強していた時代にはありえなかった「受講者の顔が見える教育」が実現できるようになりました。受講履歴から学習進度や熱意などを汲み取ることができ、キャリア支援、タレントマネジメントに結びつけることも可能です。
逆に学習者がグループウェアで、講師に質問や要望を投げかけることもできる。グループウェアで学習者同士がつながり、励まし合うなど切磋琢磨できる時代になりました。
好例が大学受験生向けのサイト「m マナビーanavee」(図表1)です。現役大学生の講義を無料動画で配信しています。仲間とコメントのやり取りなどを楽しみながら受験勉強ができる仕組みです。
このようにモバイルやSNSの普及、浸透で、eラーニングはさらなる進化を遂げようとしています。
特に近年、注目されている手法が「ゲーミフィケーション」。人を夢中にさせるゲームの要素をマーケティング手法として活用するものです。最近では企業の宣伝活動のみならず、人材開発・育成や、教育分野にも導入されつつあります。