連載 人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第14 回 『ミリオンダラー・ベイビー』
「ミリオンダラー・ベイビー」
2004年 米国 監督・音楽:クリント・イーストウッド
『ミリオンダラー・ベイビー』は私にとって、今やアメリカを代表する映画監督となったクリント・イーストウッド監督作品の中でも、特に印象に残っている映画だ。決して楽しい映画ではないが、一度観たら忘れられない。2004年度のアカデミー賞四冠を獲得した。
物語は、老いたトレーナーと女性ボクサーの話だ。トレーナー(フランキー・ダン/クリント・イーストウッド)は毎日教会に通い、遠くにいる娘に手紙を書き続けているが、全て返送されてくる。ジムで雇っている元ボクサー(エディ“スクラップ”/モーガン・フリーマン)は、かつてトレーナーが組んだ試合で失明し、選手生命を絶たれた。さまざまな過去を背負っている2人のところに、ある日、女性がやってくる。
13歳からウェイトレスをして生きてきた、31歳の女性マギー(ヒラリー・スワンク)だ。父親は死亡、弟は刑務所。妹は不正申請で生活保護を受けており、母親は体重145キロ。マギーは中古のトレーラーハウスで育った。一人暮らしを始めてからも、客が食べ残した肉を持って帰るほどの窮乏生活で、テレビもない。本当の孤独の中で生きていた。そんな彼女が、ボクシングで人生を取り戻そうとする。