TOPIC ワークライフバランスフェスタ東京 2014 レポート なぜ取り組む? どうすれば進む? 社会の「支え手」を増やすWLB
2014年1月29日、東京国際フォーラムにて、東京都主催による「ワークライフバランスフェスタ東京2014」と題するイベントが開催された。本イベントは、企業の第一線でワークライフバランス(WLB)の取り組みを行っている人物を招き、「ワークライフバランスの意義」「働きやすい職場」について問い直すというものだ。なぜ企業と個人はワークライフバランスに取り組むべきなのか、どうしたら取り組みが進むのか。その理解の一助となるイベントの模様をレポートする。
本イベントは、司会のフリーアナウンサー・木佐彩子氏によるイントロダクション、ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵氏による、ワークライフバランス(WLB)の現状についての発表から始まった。小室氏は、介護のための退職、中堅層の仕事量増加による精神疾患、モチベーションの低下など、職場で起こるさまざまな問題の一番の元凶は「長時間労働」であり、そうした状況の中、「ワーク」と「ライフ」を両立する働き方としてWLBの重要性が増していると語った。これを踏まえ、NPO法人コヂカラ・ニッポン代表の川島高之氏、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏を交えた4氏でWLBのあり方やその効果について活発な議論が展開された。
青野
サイボウズでは、以前は長時間労働が当たり前で、離職率が28%に上ったこともあった。それが原因で採用や教育の面でコストが増大したため、離職率を下げることを目的にWLBに取り組んだ。社員のニーズを汲み取り、育児休暇や短時間勤務、在宅勤務などの制度を整えた結果、離職率は3.5%まで低下した。また入社希望者の倍率も高まり、優秀な人材の獲得も進んでいる。WLBは雇用の優位性を高め、コスト削減にもつながるものだと思う。
川島
以前は総合商社に勤めていて、海外のビジネスは深夜対応が多かった。出張で2~3カ月、東京にいないことも当たり前。それでも私はWLBに取り組んできた。プライベートでも、PTAの会長、NPOの代表や理事、少年野球のコーチなどを行っているが、こうした「ライフ」の活動によって視野や人脈が広がり、コミュニケーション能力も鍛えられ、「ワーク」に活かされるようになった。本人の気持ち次第でWLBは実践できるはずである。
木佐
どうWLBを自分ゴト化していったのか。
川島
まず、会社が与えてくれるものという考えは辞め、自分で実践するようにした。実践するには基軸や理念を持つことが必要だ。私の場合は子どもと一緒に暮らすために海外には出張しないことにした。そして、絶対に曲げない基軸や理念を持ったら、それ以外のことは受け入れること。時間が限られていると思えば集中して仕事をするため必ず効率化できる。
小室
川島さんの話は2つのポイントがあると思う。1つめは、企業側がWLBは一部の社員のためのものではないと認識すること。今後、親の介護で転勤できないという人も増えてくるため、今の制度は長くは続かないはずだ。そもそもビジネスがグローバル化すればルールもグローバル化しなければいけないので、今の日本企業のように辞令一枚で転勤ということには無理が出てくる。2つめは、従業員にWLBをいかに実践する気持ちにさせるか。そのためには残業ゼロでも成果は変わらないということを示し、残業するのが偉いという風潮を変えなければいけない。当社では時短勤務の女性がトップ成績だが、残業ゼロの会社でなかったら、彼女の意欲は落ちていたと思う。
青野
その通りだと思う。サイボウズで最年少本部長になった人は時短勤務の女性だ。私自身は長時間仕事をすることが好きだったが、育児で仕事ができなくなった時に仕事を整理して他人に任せるようにしても普通に会社が回った。自分にしかできない仕事というのは意外に少ない。それに私自身、長時間勤務時にはその自覚がなかったが、午前中が準備体操のようになってしまっていた。