ここから始める!ポジティブメンタルヘルス 最終回 いきいき職場づくりに向けた展開
依然として悩ましい職場のメンタルヘルス問題。“ 未然防止”が重要になる今、人事部門がどう考え方を見直し、動けばいいかを、すぐ使える具体的なツールも含めて紹介する連載です。
1.経営としてのアプローチ
本連載では、これまでの9回を通して、これからのメンタルヘルスを進めていくうえで必要な知識と工夫点を紹介しました。第1回ではメンタルヘルスの新潮流として、ポジティブアプローチ、組織の資源へのアプローチ、経営としてのアプローチの必要性を解説しました。第2~4回では、主に組織の資源へのアプローチの考え方、仕組みづくりと運用の具体的な方法を紹介しました。第5~7回では、マネジメントによる対応として、これからのメンタルヘルスに必要とされるコンピテンシーと教育方法、個別の対応方法を紹介し、第8、9回では従業員個々人の人的資源を高めるための方法をまとめました。最終回となる本稿では、ご紹介した各取り組みの根本となる「経営としてのアプローチ」について述べたいと思います。「組織向けアプローチ」(第3、4回で紹介)では、取り組みを実施すれば健康、生産性、組織資源(職場サポートや仕事の裁量度など)に良好な効果が得られる一方、経営合理化などの組織改変に向けたガス抜きを目的として行うと効果は見られないことがわかっています※1。また、組織構成員の一部しか参加せず、全体としての取り組みを行わなかった組織でも効果が見られませんでした※2。取り組みの目的と姿勢によって効果が左右されるということは、「ポジティブな目的」に向けた「組織としての姿勢」なしに各々の取り組みを単発で進めても、効果は半減してしまうと言えるでしょう。働く人のメンタルヘルスは、つまるところ、さまざまな層のマネジメントのあり方の結果であり、根本的には経営課題だと認識することが重要です。そして、たとえ科学的に根拠のある取り組みでも、きちんと効果を発揮させるためには、経営とリンクした取り組みとすることが必須なのです。しかし、経営が率先して進めている企業よりも、担当者の熱意や担当部門の役割として、できるところから取り組みを進めている企業がほとんどではないでしょうか。以下に、今よりももっと経営に、ポジティブメンタルヘルスを浸透させていくために重要なステップを挙げていきましょう。