TOPIC 3 eラーニングアワード2013フォーラム 教育情報化はどこまで進むか?2015年までに情報端末「1人1台」をめざして
日本の教育情報化は、韓国やシンガポールなどアジア諸国からも遅れを取っているといわれている。日本で教育情報化がなかなか進まなかった理由は何か。それを打開するためには何が必要なのか。そして、今後の教育情報化の進展により、未来の学校や教育の姿はどう変わっていくのか。2013年11月22日、eラーニングアワード2013フォーラムの基調講演の様子をレポートする。
(主催:eラーニングアワードフォーラム実行委員会/フジサンケイビジネスアイ 会場:ソラシティ カンファレンスセンター)
2015年に情報端末「1人1台」をめざす
この日基調講演を行った、中村伊知哉氏が副会長兼事務局長を務めるデジタル教科書教材協議会では、1人1台のタブレット端末導入により、2015年に「全ての子どもがデジタル教科書で学べるようにする」という目標を掲げて活動を推進している(図1)。これは、政府目標の2020年を5年前倒しして2015年に目標を達成しようという思い切った施策であり、対象は全ての小中学生、約1,000万人としている。「あなたたちは、学校から紙や鉛筆をなくす気なのか?」─3年前に協議会を立ち上げ、このプランを公表した時、各方面から驚くほどの批判を受けたという。しかし、協議会の活動趣旨は、学校から紙や鉛筆をなくすというものではないと、中村氏は強調する。「当然、紙や鉛筆の良いところは生かしていきたいと思います。でも、コンピューターやインターネットにしかできないこともあるはずで、それを子どもたちに使わせてあげたい。我々は、日本の子どもたちに世界最先端のデジタル教育環境を整えてあげたいのです」2007年のiPhone、そして2010年のiPadの発表以来、ビジネスの世界では、モバイルやタブレット端末が急速に普及し、これを活用したワークスタイルの変革が起こっているが、学校の教育現場での情報化は、これまでどのように進められてきたのだろうか。日本の教育現場における情報化推進は、1990年代からICT技術の普及・進展と足並みを揃えるように20年近く進められてきたが、デジタル教科書や教材の導入については議論ばかりが先行し、なかなか実際の導入までに至っていない。そんな中、導入に向けての具体的な議論が進むようになったきっかけの1つが、小中学生の学力の低下だった。例えば、2000年頃の調査では、日本はOECD諸国の中で、算数は1位の成績だったが、その後、次第に順位が落ちてきた。その原因について、中村氏は次のように話す。「学力低下の原因は、子どもたちの『やる気のなさ』が大きいと思います。ある調査によると、『算数は面白いか?』という問いに対して、国際的には平均67%の子どもが『Yes』と回答しますが、日本だけで見ると39%しか『Yes』と回答していません。つまり、算数の授業が面白いと思わないから、やる気も出ない。授業を面白くして、やる気を出してもらうためにICTを活用できないだろうかと考えたわけです」子どもたちのやる気を起こさせ、学力の低下に歯止めをかけるためのツールとして、楽しく学べるデジタル教科書に注目したというのだ。