TOPIC 2MALLラーニングイベントレポートOJTの再創造!?: 僕らは“イマドキのOJT”の仕組みをつくることにした!
かつては日本企業のお家芸と言われたOJTだが、失われた20年を経て、「OJTが現場で機能しなくなった」と言われるようになって久しい。そんな中、大手広告代理店の博報堂では、数年前からOJTの再構築に取り組んできたという。2013年12月2日、東京ユビキタス協創広場CANVASにて主催:経営学習研究所(MALL)と共催:内田洋行教育総合研究所によって開催されたセミナーの模様をレポートする。
「そもそもOJTとは何でしょうか」と、会場に問いかけたのは、ファシリテーター役を務めた経営学習研究所(MALL)の代表理事で、東京大学の中原淳准教授である。中原氏によると、OJT(On theJob Training)とは職場で仕事を通して教育訓練すること。学問的な定義では、「上司×部下」の垂直関係の中で行われる発達・熟達支援のことを指し、その中には1.教育的介入(助言・指導をすること)と、2.権限委譲(仕事を任せること)の2つが含まれる。実はOJTは昔からあったわけではなく、1960~70年頃、高度経済成長期に製造業を中心に制度化され普及した。OJTは日本固有の制度であり、国際的にはOJTという言葉は通じない可能性が高い。かつては日本企業のお家芸とも言われたOJTではあるが、1990~2000年頃から、「OJTの機能不全」が語られるようになった。というのも、現場で仕事を学ぶOJTは以下のような脆弱性をもはらんでいるからだ。1.OJTの学習効果が「師」に依存する(属人性):幸運にも育て上手な上司に当たれば大きく成長できるが、そうでないと成長できず、職場ごとに成長のバラツキが出てしまう。2.「師」の能力を超えることは学べない:上司の能力が低ければ、それ以上のことをOJTで学ぶことはできない。3.人から人への伝達は、長期にわたって耐えるモチベーションが必要:長期雇用を前提として、長期にわたって学ぶ覚悟が必要となる。4.学習の起こるタイミングが偶発的:部下がミスをした時など、適切な瞬間(ぺダゴジカル・モーメント)を的確に捉えてフィードバックするべきだが、その瞬間がいつ訪れるかわからない。5.ともすれば「単なる労働」に変わり果ててしまいがち:現場任せにすると、OJTという名の「放置」や「単なる労働」が横行することになってしまう。OJTは、人材育成上、非常にパワフルであることは変わりない。だからこそ、これらの脆弱性に陥ることなく、時代に合ったOJT、自社に合ったOJTの仕組みをつくっていくことが求められている。中原氏は「今日は皆さんと博報堂さんの事例を共有しつつ、人材開発の方々が何をどのように考えて、今の新人に合った形でOJTを再構築、再創造してきたのか、見ていきましょう」と結んだ。