人材教育最前線 プロフェッショナル編 個の能力を組織の力に変える 自ら考え、行動する仕掛けづくり
2008年に創業100年を迎えた貝印で、新たな100年をつくる人財の育成を支えているのが、管理本部 総務人事部 チーフマネージャーの齋藤由希子氏である。「常に自然体で背伸びせず、今自分がやるべきことを着実に進めていけば、そこに結果がついてくると信じています」。派手な人事戦略も、数年先までの大きな施策もない。ただ社員たちと目線を合わせ、日々、現場の動きを見ながら、次に取り組むべきことを探っていく――。貝印が基本とする「社員が自ら考え、工夫し、動いていく仕掛けづくり」について、齋藤氏に伺った。
社員に求める自らのやる気とひらめき
人を育てるには、「教育を与えるだけでは不十分で、自分で考え、動けるよう仕掛けることが大切」と語るのは、管理本部 総務人事部 チーフマネージャーの齋藤由希子氏である。齋藤氏は2004年に貝印に中途で入社。当時、貝印では2008年の創業100周年に向け、企業メッセージの刷新や組織変更、お客様とのリレーションシップの強化など、さまざまな取り組みをスタートさせていた。中でもお客様とのリレーションシップを創出する場として、本社内に新たにオープンしたコミュニケーションスペース“ Kai House”は、ただ商品をディスプレイし、紹介するだけではなく、「さわやかで、あじわいのある日々をお客様とともに」という企業メッセージを具現化した空間だった。そのような状況のもと、齋藤氏は入社と同時に、新設されたばかりのカスタマー・リレーションシップ・センター部に配属。Kai Houseの運営とお客様相談室の2つのオペレーションを担当した。その翌年には前職での人事経験が買われ、総務人事部に異動。新卒採用から始まり、さらに新入社員研修などの受け入れ業務も担うようになった。この時、カスタマー・リレーションシップ・センター部での1年間の経験が大きく役立ったという。お客様相談室での電話対応を通して、商品知識や売れ筋商品、会社の動きなどを知ることができたからだ。「お陰で、採用や新入社員研修の場で、貝印について学生にわかりやすく説明することができました。もし最初から人事担当に配属されていたら、ひとりよがりな採用をしていたかもしれません」そう話す齋藤氏には、採用の場で心がけていることがある。それは、「例えマニュアルのある営業職であっても“プランニング”という要素が不可欠であり、ひらめきや、やる気が大切だと伝えること」だという。貝印では、百貨店、大手量販店、ホームセンターなどでの店頭販売を中心に、包丁や調理小物などのキッチン製品から、カミソリ、ツメキリなどの美容・生活用品まで多種多様な商品を扱っている。そのため営業職は、自分が担当している小売店の要望に合わせて、どういった商品をラインアップすればよいかを提案する必要があるのだ。「これを売り場に置いてくださいと主張するのではなく、自分の目線でお客様と向き合い、プランニングして提案することが求められるのです」