第42回 考えることこそビジネスパーソンの本質 菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

経営や人事を担う人にとって、ビジネストレンドの把握は欠かせない。
1日1冊の読書を20年以上続ける読書のプロが、ビジネスを読み解く書籍を紹介する。
書店を応援する者として
2025年6月、経済産業省が「書店活性化プラン」を公表した。街中にある「書店」は創造性が育まれる文化創造基盤として重要であるという認識のもと、2024年3月に立ち上がった「書店振興プロジェクトチーム」による国策である。古くから書店を愛する者としては、ぜひ成功してほしい取り組みだ。本プランにも書かれているが、私の周りでも、「独立系書店」とよばれる個性的な個人経営の小規模書店が増えており、街を歩いているときに見かけると、つい店内に引き込まれてしまう。また、本をじっくり読めるカフェも増加傾向にある。書店でじっくり本を選び、意外な1冊との出会いに喜び、カフェや公園で読みふけるのは、まさに“至福の時間”だ。
生成AI時代だからこそ、リアル書店での出会いの価値が上がると感じているのは、私だけだろうか。
考えることこそ重要なスキルなのでは
最近、「考えること/考え抜くこと」の重要性を考える時間が増えた。ChatGPT登場の衝撃から、わずか2年半。まだ短い歴史ではあるが、日々の様々なプロジェクトにおいて、本当に助けられている。特に“1人ディベート”の際に話し相手になってもらえるのは実にありがたい。
一方で生成AIはもとより、インターネットもない時代からビジネスに携わってきた者からすれば、考え抜いてアウトプットを捻りだし、ときにダメ出しされ、たまに評価もされてきた1990年代前半を懐かしく思う。「考え抜く」工程は自分を随分と鍛えてくれたように思う。これからの若い人があえてそのような経験をする必要はないのかもしれないが、それでも、ときにはスマホやPCを手放し、「自分の頭の中」だけで考えてみることをお勧めしたい。
今回は「考える」をテーマにおいて、以下のポイントで選書してみた。
①SNS時代だからこそ持っておきたい視点が学べる書籍
②あえて距離感を取りながらも、真理が学べる書籍
③「思考転換」の手法が学べる書籍
④「言葉の重み×考えること」という視点で学べる書籍
自戒の意味もあるが、よく研修等の場で、今後、世の中において「考え抜く」力が落ちていくことが不安だという話をしている。これからも「考えること/考え抜くこと」を大切にしながら時を過ごしていきたい。
