おわりに 人と組織の未来を変えるファシリテーションの力

いまなぜファシリテーションなのか
もともと「やりやすくすること」が原意というファシリテーションという言葉が、日本のビジネス界に登場したのは、2000年代初期だという。そこから少しずつ広がり始め、いまでは少なくない企業が研修を導入するなど、従業員のファシリテーション力を重視するようになった。
ファシリテーションとは端的にいえば、「集団による知的相互作用を促進する働き」だと小田理一郎氏(OPINION3)は説明する。その役割は、集団として成果・結果を生み出す場で「プロセス」も重視しながら場をデザインし、集団が課題や解決方法などを見いだすのを容易にすることだ。
なぜいま、そのファシリテーションが重視されるのか。理由の1つはコラボレーションの機会が増えたことにあるだろう。複雑化し正解がない世の中で、社内外の多様な人たちと話し合い、答えを見いだす必要性が高まっている。また、イノベーションにつなげる組織開発という観点でもファシリテーションへの期待は大きい。日本ファシリテーション協会を設立した堀公俊氏(OPINION1)は、「イノベーションが起きない理由には組織の問題がある。会議のファシリテーションによって組織の問題を可視化することで、組織開発につなげることができる」と話す。ファシリテーションとは単に会議をスムーズに運営するものではなく、組織を改善していくものでもあるということだ。