CASE.2 全社を挙げての語学啓蒙活動 10年先を見据えて自己啓発を促す中国語人材育成
世界各地でエンジニアリングビジネスをリードする日揮。同社では、2012年に「中国語/中国ビジネス啓蒙活動」を全社を挙げてスタートした。今後のビジネスにおいて、強固となるであろう中国との関係性を見据えてのことだ。「中国語人材育成」という経営からの要請に、チームワークで応える事務局メンバーから話を聞いた。
10年後のビジネスを見据え中国語習得者の養成を開始
世界トップクラスのエンジニアリング会社として、日本を含む世界80カ国以上で石油・LNG・ガス等のエネルギー関係のプラントを建設。近年は、医薬品工場建設や病院の建設および運営、新エネルギー事業、環境事業なども手がけている日揮(本社・神奈川県横浜市)が、「中国語/中国ビジネス啓蒙活動」をスタートしたのは2012年4月のことだ。活動を立ち上げた理由を、事務局メンバーとして「中国語/中国ビジネス啓蒙活動」の企画・運営を牽引している荒谷秀明氏(事業推進プロジェクト本部管理チームマネージャー)に伺った。「『中国の成長は目覚ましく、いずれは世界のどこで仕事をするにも、中国との関係が極めて重要になってくるだろう。そうなってから中国語を勉強しても遅い。今から中国語のできる社員を養成しよう』という、私どものトップ(日揮グループ代表重久吉弘氏)からの提案が発端です。当社は業務の中で英語を使う機会がとても多いため、英会話に関してはどの社員も日常的に鍛えられていますし、英語力向上のためのモチベーションも途切れることがありません。ところが、中国語は使う機会がほとんどないのが現状。ですから、社員が自発的に中国語を勉強するような環境を、会社側が意識的につくらなければならないと考えたのです」同社の中国での事業展開は、日中国交正常化の翌年、1973年にスタート。プラント建設だけでも、70件ほどの実績を誇っている。「海外の技術に頼っていた中国ですが、『大本の基本設計はお任せしますが、それを詳細設計に落とすのは自分たちでやります』『機材のうち、鉄骨やタンクといったベーシックなものは、我々が調達します』と、当初から技術を身につけようという姿勢は強かったのです。徐々に実力を身につけて我々の供給範囲が狭まっていき、2000年代に入ると、とうとう我々にお声がかからなくなってしまったんです」と語るのは、同じく事務局の笹原勉氏(営業本部中国・環境事業開発部部長代行)。「中国でのプラント建設がなくなったにもかかわらず、中国語を重視する理由は3つあります。1つめは中国での新事業。都市開発や省エネ、環境、医療などの分野で、中国でのビジネスチャンスを狙っています。2つめは、中国企業による世界各国での企業M&Aや株式取得。我々がターゲットとしている事業の舞台がロシアやアフリカであっても、その事業に中国企業がかかわっているというケースが現れ始めています。『中国以外の国なのに、お客さんは中国企業』というケースは今後ますます増えていくでしょう。3つめは、コスト面での競争力強化。将来的には設計や建設の現場に中国の方々を積極的に採用していくでしょうし、中国製の機器の利用も今よりずっと増えるはず。中国の人たちと一緒に働く機会は、どんどん増えていきます」(笹原氏)
文化やビジネスを通じて中国への興味・関心を喚起
「中国語/中国ビジネス啓蒙活動」を実際に動かすためのプロジェクトメンバーとして白羽の矢が立ったのは、レベルはさまざまながら中国語を学んでいる10数人の社員。全員が本来の仕事を抱えているので、プロジェクトはボランタリーな活動ということになる。「中国語学習を促進するための仕組みをつくることが命題でしたから、もちろん中国語の教育はやろうと。さらに中国そのものに興味を持ってもらえるようなイベントを企画する『中国ビジネス』『中国文化』という2つのグループと、人事施策を担当するグループをつくり、実行委員長・副委員長・事務局・各グループリーダーを中心とした活動の骨組みができました」(荒谷氏)