CASE.1 全員でやり遂げる 世界企業となる!社内公用語英語化のこれまで
2010年2月の「朝会」(社員全員参加の会議)で、三木谷浩史社長が宣言した「社内公用語英語化」。2カ月後には、その朝会や執行役員・取締役会議が英語化していたというフルスピードで進化してきた同社の取り組みと、現在について聞いた。
グローバル化は義務加速する海外展開
まず楽天が「社内公用語英語化」に踏み切った事情をおさらいしておこう。バックグラウンドには、日本経済の縮小がある。2006年時点で日本のGDP(国内総生産)は世界の約12%を占め、そのシェアは世界第2位であった。しかし2050年には、日本のGDPシェアは世界の3%、順位は第6位に後退すると見られている。もはや大国とは言えなくなっていく日本の中で生き残りを図るのか、それともより大きく広がる世界市場で飛躍するグローバル企業になるのか──突きつけられたこの課題に対する楽天の回答は、後者の道の選択であった。2010年に行った国際事業戦略説明会の中で、三木谷浩史社長は、「海外展開は楽天にとって選択肢ではなく義務だ」と述べている。楽天は現在、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアにおいて、eコマース事業では世界14カ国・地域で、全てのサービスを含めると世界27カ国・地域で展開しており、グローバル展開を急速に拡大させている。2010年5月には、図1の目的を達成するために社内公用語英語化(Englishnization)プロジェクトが立ち上げられ、図2のような施策が相次いで打ち出されたのであった。
TOEIC スコアで見る社内公用語英語化の成果
楽天が社内公用語英語化プロジェクトの評価指標の1つにしているのがTOEICだ。スコアは、プロジェクト立ち上げ初期(2010年10月)での全社平均点は526.2点であったが、2014年1月までに767.1点まで上昇した(上記グラフ)。楽天では図3のように、進捗を「見える化」することで、部署対抗でゲーム性を持たせて楽しみながら英語化を進める工夫をしている。社員のグレードに応じてターゲットTOEICスコアを設定し、そこからどれだけ点数が離れているかによって、社員一人ひとりをゾーンに分けている。ゾーン進捗推移を見ると、2011年3月時点では、ターゲットに達しているグリーンゾーンの社員の比率は29%に過ぎなかったが、2014年1月現在、48%以上の社員がゴールドゾーン(800点以上)、32%がグリーンゾーン(ターゲットスコアをクリア)となっている。このように、TOEICスコアの結果には、実際に大きな改善が見られたのである。なお新卒に関しては、入社時までにTOEIC800点を確保することを求めており、2012年4月入社(327名)および2013年4月入社(306名)の平均点は、いずれも800点を上回っている。グローバル人事部HRディベロップメント課の藤本直樹氏は「800点以上の点数をすでに持って受けてくる新卒者が増えてきており、むしろ英語が得意というだけでは評価されなくなった」と語った。