OPINION 1 「英語を学ぶ」から「英語で学ぶ」への転換 世界的価値連鎖の時代
なぜ、語学力が必要なのか。なかなか本気で学習に取り組めない人が多いのは、世界の変化を肌で実感できない人が多いからではないか。トップコンサルタントとして、日本と欧州で活躍してきた琴坂氏に「グローバル化」の意味と、語学が必要な理由、人事の役割を聞いた。
「差異」を乗り越えて世界的価値連鎖に加わる
「世界的な価値連鎖を背景にした、より大きな国家間の『差異』をいかにマネジメントするか」。これこそ、今後の企業、そして人事部における最大の課題だろう。1960~70年代のグローバル化は、「輸入した原材料を国内で加工し、それを輸出する」という単純な構造だった。企業は、海外に売る、海外から買う、海外でつくるという現代に比べれば比較的単純な国際経営の課題に直面していた。しかし、現在の「グローバル化」は、世界的な価値連鎖の時代という、かつてとは大きく異なる段階に到達している。現在は、世界の複数の地域が協業して製品やサービスを提供することが一般的となった。そして、多くの企業は同時並行的に世界中のパートナーと協業し、それを世界中に供給しているのである。2月に発売した拙著、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)では、このような競争環境を「セミ・グローバリゼーション」の世界と捉え、その特殊性を解説している。定時的、迅速、かつ低価格に大量に人とモノを輸送する世界的な輸送網の登場。通信衛星や海底ケーブルが世界をつなぎ、地球の裏側まで一瞬で情報を届けられる現実。国際標準などの人工言語の普及と国家間協調体制の整備。いわゆるグローバリゼーションによって、世界は確実に「同一化」しつつある。しかしその一方、国境や文化圏を越えたコミュニケーションは、かつてとは比べものにならないほど濃密化している。90年代以降、欧米だけではなく、旧共産圏や第三世界が市場として、生産拠点として、時にはパートナーや競争相手として、より強く認知されるようになった。世界で戦い続けるためには、ただ買う、売るだけではなく、相手を知り、協業する必要が生まれてきた。より各地域に入り込み、その特殊性を理解することが求められる時代となった。それができる企業や個人がグローバル化でさらに競争力を高め、それができない個人や企業は、戦うことすらままならない時代と言える。このような世界的価値連鎖の時代においては、差異をマネジメントし、相互理解につなげるために、より深い「会話」が必要となる。そのために、語学という基礎能力が、今まさに顧みられているのである。
価値連鎖の世界で戦い抜くために語学は前提条件となる
世界的な価値連鎖の時代は、過酷な時代であると同時に、可能性に満ちた時代とも言える。