CASE.1 綿密なフィードバックを繰り返す アクションラーニングで戦略構築力を徹底強化
総合商社の双日は、部長職を「成長の要となる重要なポジション」と捉え、部長育成を重視している。具体的な施策としては、2007年に導入した「新任部長研修」と、2011年から行っている「戦略構築力強化研修」の2つがある。2012年には、後者の対象範囲を人事総務部と主計部をはじめ、管理部門にも広げた。その具体的な内容と、背景にある考えとは。
●取り組み1部長は唯一無二の組織・事業を率いる長
目まぐるしく変わる経営環境に迅速に対応し、競合に打ち勝つには、会社の唯一無二の組織・事業を率いる長である部長の戦略構築力の強化が欠かせない。そうした認識から、双日では、「新任部長研修」と「戦略構築力強化研修」を導入し、部長の育成強化に乗り出した。
1.新任部長研修
そのうち、2007年に始めた「新任部長研修」は、新たに部長職となった社員に対し、部長の役割・責務とは何かを認識させる場として、年2回実施している。プログラムは2回に分け実施し、1つは、経営方針へのより深い理解の醸成や部長に求められる役割について、人事担当および経営企画担当役員2名がファシリテートするインタラクティブなディスカッション形式のもの。もう1つは、外資系企業のトップ経験のある外部講師による組織マネジメント論やリーダー論だ。部長と言うと、とかく課長と一括りにして“管理職”と捉えられがちだ。だが、「部長に求められる役割・責務は、課長よりも圧倒的に大きい」と、人事総務部グローバル・人材育成課課長の阿部洋司氏はその違いを強調する。「課長が、現場のオペレーションの責任者であるのに対し、部長は、ビジネスの基本の単位である“部”の長として、その方針や戦略を決め、組織を導いて目標を達成する責任を負っています。また、課長は部長に提案する立場ではありますが、経営に向けた企画立案の正式な権限はありません。一方、部長は与えられた組織で、その事業をやるかやらないかを決める権限を持っている。言い換えれば、その組織に『必要なもの』とは何かを考え、立案する使命があるのです」
●取り組み2実際に戦略構築・実行を繰り返すAL型研修
2.戦略構築力強化研修
そして2011年からは1に加え、部長の戦略構築力と組織マネジメント力をさらに強化するために、アクションラーニング(AL)型の「戦略構築力強化研修」を始めた。対象者は戦略的視点から、注力事業や戦略のブラッシュアップが必要な事業の部長を中心に選抜している。初年度は、営業部門から8名の部長が選ばれ、翌12年には人事総務部と主計部をはじめ、管理部門の部長も対象に加えられた。「管理部門も、人材育成や事業会社の経営管理等、機能のより一層の強化と、新しいことへの挑戦が求められているため、対象としたのです」