CASE.2 情熱、方向性、そして夢―― 部長の“経営者品質”を高める研修とは
2011年10月、住商情報システム(SCS)とCSKが合併し誕生した「SCSK株式会社」。「グローバルITサービスカンパニー」として、システム開発からITインフラ構築、ITマネジメント、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)まで、幅広いITサービスを提供している同社では、合併を機に、「部長研修」を中心に据えた社員教育に注力している。その内容と、背景にある考え方を取材した。
●背景部長を含む“経営者品質”が全ての源泉
大企業的な秩序正しい文化を持つ住商情報システム、オーナー企業的な文化のもとで実力本位な人材登用を行ってきたCSK──文化が非常に異なる2つの会社の合併に際して、両社の人事部では経営統合前から、経営や文化を融合するための施策計画を練り、実行してきた。合併の翌日(2011年10月2日)には、すでに両社の全部長が参加する本計画の中核研修がスタートしていたという。人事グループ人材開発部 人材開発課 課長の中藤崇芳氏は、部長への教育の重要性をこう語る。「企業が業績を上げ、顧客や株主に価値と満足を提供し、勝ち残っていく。その力の源泉は人です。人のスキルとマインドを、当社では『社員品質』と呼んでいますが、その社員品質の9割は、経営者やライン職の質、つまり経営者品質で決まる。だからこそ、部長に教育を行うことが重要なのです」部長層を対象とした研修は、主に「経営リーダーワークショップ」と「マネジメント融合研修」という2本の柱で構成されている(図1)。それぞれの内容を見ていこう。
●取り組み1共通の経営観を根づかせ経営者品質を向上させる
1.経営リーダーワークショップ
経営の原理・原則に関する共通言語・共通認識をつくり出すことを目的として実施したのが「経営リーダーワークショップ」だ(これ自体は全層を対象にしており、合併前の2011年3月から順番に役員〈取締役〉、本部長〈執行役員〉、部室長〈部長〉、課長、一般社員を対象に実施)。部長層を対象として開始したのは2012年6月からである。「この研修では、まず経営者の視点や考え方とはどんなものなのかを学びます。合併を機に、双方の会社出身者で1つの経営観を共有していかなければならないと考えたからです。部長層について言えば、双方どちらの出身であっても、長い間教育を受ける機会がなかった人たちが多く、マネジメントスタイルやリーダーシップの発揮が自己流になっている傾向にあった反省も背景にありました」(中藤氏、以下同)