人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第19回 『レバノン』
シリアが内戦状態になってから3年経つ。もうそんなに経ったのかと改めて驚く。他のニュースもいろいろ入ってくるし、3年経つと正直、もう何が何だかわからない。中東情勢は複雑だ。特別に注視でもしていない限り、中東の現状について語れる人は少ないだろう。『レバノン』は2009年のベネチア国際映画祭で、金獅子賞を受賞した佳作である。映画通からは注目されたが、わかりにくい題材でもあり、東京では一館のみで限定公開された。だが最初から最後まで、戦車の中で物語が展開するという手法の斬新さも含めて、中東情勢に疎くても見応えのある映画となっている。レバノンは元々シリア地方の一部として、オスマン帝国内で独自の共同体を築いていた地域だ。第一次大戦後、フランスの委任統治領となった後に独立宣言。第二次大戦後は「中東のパリ」と呼ばれ、地中海有数のリゾート地として栄えた。しかし70年代半ば、イスラエルに追われたPLO(パレスチナ解放機構)が流入する。その結果、微妙な宗派バランスの上に成り立っていた均衡が崩れ、内戦になった。そこにシリアが介入し、次いでイスラエルが侵攻してくるのである。この映画は、1982年にイスラエルが、レバノン領内の武装勢力から攻撃を受けたとして、二度目の侵攻を行った時の物語である。