船川淳志の「グローバル」に、もう悩まない!本音で語るヒトと組織のグローバル対応 第2回 グローバル社会の多様性に向き合う
多くの人材開発部門が頭を悩ませる、グローバル人材育成。グローバル組織のコンサルタントとして活躍してきた船川氏は、「今求められているグローバル化対応は前人未踏の領域」と前置きしたうえで、だからこそ、「我々自身の無知や無力感を持ちながらも前に進めばいいじゃないか」と人材開発担当者への厳しくも愛のあるエールを送る。
「グローバル化」の意味すること―多様性とつながる
前回、「グローバル」ということばを巡って経営層から現場社員まで、さまざまな混乱が起きているという問題提起をした。グローバル人材、グローバルカンパニー、グローバルビジネス、そして「グローバル化」という具合に、「グローバル」ということばが氾濫している。日本の大学教育の改革者として活躍された故中嶋嶺雄氏によると、「グローバル化」という語は1944年、カナダの社会学者O・レイザーとB・デーヴィスの著書『宇宙的民主主義』の中に初めて出てくるとのことだ。私自身が、「グローバル」というカタカナの文字に出会ったのは、1976年。当時師事していた武道の先生の著書の中でこのことばが紹介されていた。海外での普及活動の実体験から、まさに「地球」を表す英語、globeの形容詞、global=地球全体のという意味のことばを認識されていたのだろう。そして、地球規模での経済活動が活発になり、『ハーバード・ビジネス・レビュー』1983年5月号で、テッド・レビットの“The Globalization of Markets”が掲載された。それ以降、ビジネスにおいて「グローバリゼーション」ということばが急速に普及したのは周知の事実である。1983年5月と言えば、私が当時AIG(アメリカンインターナショナルグループ)の一員、アリコジャパンに入社した時だ。その後、グローバル化はIT 技術の進展に伴い、どんどん加速している。ただし、それは、インドのジャーナリスト、ナヤン・チャンダが著書『グローバリゼーション 人類5万年のドラマ』に記したように、我々の祖先が、有史以来、遠い地域に足を運び、いろいろな地域、人々とつながりを強化してきた「人類5万年のドラマ」でもあるわけだ。この本の英語タイトル『Bound Together』がよく言い表している。21世紀に入ってから、グローバル化は、中国語のグローバリゼーションを表す「全球化」の時代になった。東西の冷戦構造が続いていた時代は、「全球」ではなく「半球」であった。また、東側と西側諸国の区分だけではなく、以前は北半球の経済発展がメインであったが、BOP※ビジネスが認識されてきたように、まさに全球化の様相を見せている。つまり、全地球規模で、経済面だけではなく、文化、社会的な側面でもさまざまな地域と人々がつながってきているわけだ。したがって、inter-related,inter-linked, inter-connected,そしてinter-dependentという相互結合や相互依存をあらわす英語表現がグローバルビジネスではよく出てくる。「地球は1つ」とか「地球は狭くなった」というのはなじみがあることばであるが、実は、幻想を生み出す表現でもある。つまり、多様性を内包していることが見えにくくなるのだ。その事例を紹介しよう。