CASE.3 古河電気工業 部門内の人材育成について皆で考えさせるOJT制度
古河電気工業の「OJTリーダー制度」は、ただの新入社員教育ではない。新入社員の教育を通して、リーダーの育成と職場の育成力、組織力強化などを同時に行うという取り組みである。その仕組みと工夫とは。
一般的なOJTの仕組みは、新入社員に指導役がついて、手取り足取り指導していくというもの。古河電気工業の「OJTリーダー制度」も、基本的にはOJTリーダーが中心になって新入社員を育てていく。しかし、一般的なOJTやメンター制度と決定的に違っているところがある。それは、「OJTリーダー」に、部門内での特定の役割が与えられている点だ。人事総務部人財育成担当部長の上原正光氏はその役割をこう語る。「OJTリーダーには、組織で新入社員を鍛え、部門全体で新入社員を育てていくという目標を達成するために、『アレンジャー』役を果たしてもらっているのです」この「OJTリーダー」の要件は、課長職未満で、新入社員に直接接する社員。職場によって入社2年目の社員から30歳代・40歳代のベテランまで、さまざまな年齢層のOJTリーダーが存在している。「OJTリーダー制度の目的は一義的には新入社員教育ですが、実は真のねらいは、組織イノベーションを起こすことにあります」(上原氏、以下同)「新入社員教育を行いながら組織イノベーションを起こす」とはどのような意味なのか。以下、同社の「OJTリーダー制度」の仕組みを見ていく。
●仕組み全5回の研修が中心
上原氏が2010年にスタートさせたこの制度は、新入社員のOJTのPDCAを1年かけて回していくものだ。その過程で、OJTリーダーを支援する「OJTリーダー研修」を5回にわたり開催している(図)。
○1回目 キックオフ研修(5月)
1回目の研修は、新入社員がまだ正式に配属される前の5月に行われる。「新入社員が自分の席に座った時に、やるべきことが計画されていること」が最初のテーマだ。そこでOJT計画の立案の仕方から、グループメンバーを巻き込んでいくコツ、新入社員の特徴や傾向などをレクチャーする。さらに、OJTリーダーの役割についてや、この制度の趣旨、1年間のロードマップなどについて説明をし、OJTが新入社員だけでなく、OJTリーダー自身にとっても有益であることを理解してもらう。役割というのはもちろん、先述の「アレンジャー」としての役割だ。