ID designer Yoshikoが行く 第85回 研修開発から能力開発へ ASTD71年目の大変身
ゴールデンウィーク真っ只中の5月初旬、毎年恒例のASTD2014ICE(米国人材開発機構2014年度国際会議)に参加するため、ワシントンDCにやってきた。ポトマック河畔もすっかり新緑に染まり、オフィスビルの谷間の公園では、初夏の爽やかな風に吹かれてのんびり日光浴を楽しむ人たちの姿が目につく。そんなのどかな街のコンベンションセンターで、世界中から集まった1万人近い人材育成の専門家たちが、1年ぶりの再会に盛り上がったり、著名人のサイン会で大人気なくキャーキャー興奮したりと、いつものように和やかに過ごすつもりでいたら、今年は仰天ニュースが待っていた。なんと!「今年が最後のASTDになる」というのだ。ASTDのプレジデント、トニー・ビンガム氏のこの発表を聴いて、驚きのあまり口をポカンと開けている参加者もいる一方で、「20年以上にわたって検討を繰り返し、ようやく発表にこぎつけた」(ビンガム氏)という説明に深くうなずきながら、「やっぱりねぇ……」と囁く人が多かったのも事実である。というのもここ数年、ASTDのディレクターたちは折に触れ、「近々、研修開発の世界は大きくシフトする」という思わせぶりなメッセージを発信していたし、会員の間からは、「脳科学からソーシャルラーニングまで、我々がカバーしなくちゃならない分野がどんどん広がって、もうタイヘン」というため息が聞こえていたからだ。そこにこの衝撃の、「さよなら、ASTD!」宣言。「えっ、なくなっちゃうの?」と慌てた会員もいたが、さにあらず。新しいブランドATD(Association forTalent Development:能力開発機構)を掲げて、組織変革を進める。ブランド名の変化の通り、研修開発から能力開発へ、米国からグローバルへ、「ASTD71年目の大変身」に挑戦するのである。