人材教育最前線 プロフェッショナル編 環境と経営の変化に呼応する戦略的人材マネジメントへの歩み
資源・エネルギー分野から社会インフラ、航空・宇宙関連まで幅広く製品と技術を提供するIHI。その人材育成はグローバル化のさらなる加速と共に大きな転換点を迎えている。2013年、グローバル、グループ、ダイバーシティをキーワードとする「グループ人材マネジメント方針」を打ち出し、「求める人物像」を明文化。その立役者でもある人事部長の長野正史氏は「全ての人事施策のベースはこの方針と人物像にある」と語る。改革の舵を取る長野氏がめざすのは、経営方針に並走する成長戦略的人材マネジメントである。
人材開発に生きる労務の経験
長野正史氏が石川島播磨重工業(現IHI)に入社したのは1982年。兵庫県相生市の相生労働部に配属され、工場従業員の教育と労使関係、いわゆる組合との交渉窓口役が最初の仕事だった。2012年に人事部長に就任するまで船舶海洋事業本部や航空宇宙事業本部で管理部門や総務部門を歴任し、さらに営業統括本部九州支社長なども経験するが、長くは人事部門を中心とした労働管理や労働安全などに携わってきた。「労務部門で常に考えていたのは、従業員にいかに気持ちよく働いてもらうか、それをいかにモチベーションへとつなげてもらうか。制度づくり、賃金、福祉などあらゆる面で、とにかく働く人のことを考えました」そうした気概が、人材開発を進めるうえで役立っていると長野氏は言う。
人材育成5 つの重点項目
IHIグループの人材開発の先頭に立つ長野氏がターニングポイントとして振り返るのが、「グループ人材マネジメント方針」の制定である。IHIでは、“成長”をキーワードとした「グループ経営方針2013」を定めている。これは、同社の経営理念・グループビジョンに基づいた3カ年の中期経営方針だが、この作成段階において当初、人材育成に関する項目がほとんど盛り込まれていなかった。「“人材こそが最大かつ唯一の財産である”ことを経営理念の1つに掲げ、社長の斎藤(代表取締役社長兼最高経営執行責任者斎藤保氏)も『人の成長をなくして企業の成長なし』と言っています。そうした中で人材育成に関する項目は不可欠であると考え、経営企画部と話し、“人材マネジメントの改革”の章を入れてもらいました。さらにそこから、人材マネジメントに関する基本的な理念、考え方、価値観を示し、経営理念・グループビジョンに呼応する長期的方針として定めたのが“、グローバル・グループ・ダイバーシティ”の3つをキーワードとした『グループ人材マネジメント方針』です」