TOPIC 日本のタレントマネジメント実態調査報告 日系企業はタレントマネジメントをどう捉え、活用しているか
ASTDインターナショナルネットワークジャパン タレントマネジメント委員会では、2011年からタレントマネジメントに関する日本の実態調査を実施した。
それは、グローバル化をめざす日本企業のタレントマネジメント施策の現状について6業種8企業に聞き取り調査をしたもので、去る2014年5月14日、東京都内で同委員会委員長の石山恒貴氏(法政大学大学院教授)が報告した。その一部を紹介する。
8象限による全体分析
今回の調査では、日本企業が、タレントマネジメント(以下TM)をどのように捉え、導入状況や、導入企業には何のためにどのように運用しているのかを明らかにする試みが行われた。協力企業は外資系2社、日系企業6社で、業種は製造業(3社)、倉庫陸運、IT関連、情報通信、レジャー、食品である。比較のため、外資系企業にも調査している。以下、ATD(ASTD)が提唱するTMの推進フレーム・モデル8象限(図1、この図の説明は28ページ石山氏記事も参照)の、それぞれに沿って、どのようなことが行われていたかを見ていきたい。
●Organization Development(組織開発)
まず一番上の象限である「組織開発」とは、生産性を上げるために組織の構造を修正し、効率化を生む活動全般のことであり、TM全体へ影響を及ぼす、ビジネス戦略の入口である。だが、聞き取り調査の結果、「組織開発」もTMと同じく曖昧に捉えられていることがわかった。例えば人材・組織の評価の仕組みそのものと考える企業もあれば、挨拶運動、社内運動会、社員旅行といったイベントだとしている企業もあり、非常に幅広く捉えられていた。
●Succession Planning(後継者育成計画)
「後継者育成計画」は、「組織の重要なポジションの後継者を見極め、育成のための計画を練る」ことである。日系企業は外資系企業と異なり、職務定義やポジションという概念が明確ではない場合が多い。そこで委員会では、将来のリーダーとなる優秀な幹部層を集め、タレントプールを設けているかどうかという観点から聞き取りを行った。その結果、1.実施していない2.実施しているが、社内で対象者を公開していない3.実施し社内に対象者を公開しているの3種類のタイプに分かれた。社内に対象者を公開していない場合の理由は、選抜された人は慢心し、選抜されなかった人はモチベーションを落としてしまう懸念があるからである。一方、公開している企業(外資系)では、毎年選抜者の入れ替えがあり、タレントプールの流動性が高いため、そうした懸念は深刻でないという。