CASE.2 日立製作所 困難を乗り越えるのはグローバルメジャーへの意識
V字回復を成し遂げた日立グループ。その原点は2011年に策定した「グローバル人財マネジメント戦略」だ。「グループ・グローバル」をスローガンに立ち上がった新たな人財育成とは。世界の強豪と渡り合い、勝てる経営リーダーをどう選抜、育成するのか。日本発・日立製作所発を脱却した、新生グローバル企業への革新を取材した。
●推進の背景世界発想で人財開発
2011年7月を機にグローバル展開に向け大きく経営の舵を切った日立グループ。「2015年度に海外売上高比率を50%超に」という目標を掲げ、大胆な人財戦略を推進している。従業員数約32万人と規模の大きい同社におけるグローバルタレントマネジメントの狙いやいきさつを、人財統括本部グローバルタレントマネジメント部の竹内光憲氏はこう語る。「当グループの人財マネジメントの基本方針の大きな柱が『グループ・グローバル』です。日立製作所発、日本発でビジネスを考えるのではなく、日立グループ全体、世界全体で考えようという意味です。背景には、2009年3月期に計上した7873億円という過去最大の赤字があります。この反省に基づき当時の川村隆会長兼社長(現相談役)が新たな経営計画をスタートさせました。それまでは人財戦略も含め、ビジネスそのものが日本的発想に基づいていた。これでは世界の強豪と戦うことはできません。人財マネジメントも変革を迫られました。中期経営計画の海外売上高比率50%を実現するには、グローバル市場で戦える組織と人財を整える必要がある。そこでまず、人財マネジメント部門自体の改革から着手することにしました」
2015年をめどに立てた目標は「ビジネスに資するため、グローバルにワールドクラスの人財部門になる」だった。また、国や地域を越え、グループ一体となったマネジメントができる部門をめざそうと決めた。「これまで当グループは各国、各社が個別最適で人財マネジメントを行ってきました。しかし、グローバル人財施策を推進するためには、グループ・グローバルでの最適を考える必要があります」当然、それぞれの国の法律や商習慣、慣習があるため、ローカライズは必要である。だがそれでも、グループ・グローバルで共有すべきもの、またはリージョン(地域)で共有すべきものがあるのでは、と考えた。
そして、着手したのは人事の組織体制の組み直しである。2011年7月以降の現体制ではまず、グループ・グローバル全体を包含する「グローバルHRM部隊」を置く。そのもとに5極(米国、欧州、アジア、中国、インド)を統括する「五極HRM部隊」、それに「日本HRM部隊」の全6極が、各リージョンにおける人財マネジメントを担当する(図1)。この下で海外会社やカンパニー、国内会社のHRM部門が機能する仕組みである。「ソフトウエアに例えれば、まずグループ・グローバルで共有するオペレーションシステムがあり、そこにリージョンで運用するミドルウエアが乗っている。さらにその上に各社で個別に使うアプリケーションが搭載されている、という感じでしょうか。日本を基軸に世界を捉えるのでなく、日本を含めた6極を並列に考える。ビジネスと協働しながら、世界共通のHRMの制度、ノウハウを構築、横展開できるようにしました」