OPINION 2 「タレントマネジメント」は一面でしかない 次の社長を発掘し育てるには泥臭い関わりと仕組みが必要
日本鋼管や日本GEで人事の要職を務めた八木氏は、「『タレントマネジメント』だけを人事の一機能として取り上げることに意味はない」と語る。
その真意と共に、LIXIL 流のリーダー人材の発掘と育成はどのような枠組みになっているのかについて聞いた。
人事の役割は“社長”の育成
──2014年4月、グローバルマネジメントをより強化、推進する新体制に移行すると発表されました。その中での人事の役割とは。
八木
それは、企業の戦略を実現するための人材の発掘・育成・活用であり、そこに絡む全ての要素が人事の仕事になります。したがって、いきなり否定するようですが(笑)、人事の役割の中から「タレントマネジメント」だけを1つの機能として取り出して議論することに、私はあまり意味を感じていません。
──ではLIXILの人材育成の柱は。
八木
「リーダー」、もっと簡単に言えば、「社長を育てること」です。当社では、「住生活産業においてグローバルリーダーになる」ことを経営目標に掲げており、これを実現するリーダーを育成するのが人事の役割だと考えています。多くの企業の人事は、もっぱらマネジャーを育てることに注力していますが、マネジャーを育てることと、社長(リーダー)を育てることは全く違います。マネジャーは、決められたことを確実に行うのが役割ですが、リーダーの役割は、道なきところで進むべき方向性を定め、組織を率いてその方向に進み、目標を達成することです。そのためには、揺るがない価値観を持つことが重要です。自己主張の強い外国人の中にあってもしっかりと自分の意見を伝え、相手が間違っていたら指摘できる強さが必要です。そのためには、自分自身の価値観、判断の軸を持つことが欠かせません。もう1つ重要なのは、「プロになる(プロをつくる)」ことです。道なき場所で進む方向を決めるためには、戦略、財務、マーケティングなど、経営についての深い知識を持つ必要がありますが、日本企業にはそうしたプロがあまりいません。ですから、当社の人材育成は、自身の価値観と経営判断に必要な知識を持ったリーダーを育てることが中心になっています。
──リーダーは、どのタイミングで見つけ、育てるのでしょうか。
八木