めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第16回 これからの人材に必要な「起業家」マインド
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた、情報のプロが最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
労働環境の変化に伴い、いわゆる「起業家本」がここ数年のうちにずいぶんと増加した。かつての終身雇用前提の人事制度の終焉に伴い、今勤めている会社に居続けることにリスクを感じる風潮があり、こうした書籍の発刊を後押ししている。危機感にかられて起業家本を手に取るビジネスパーソンは決して少なくない。とはいえ、ふと立ち止まって考えてみると、ビジネスパーソンの多くは現在の勤務先において、経営計画立案や新規事業企画、顧客向け企画書・社内提案書の作成、営業活動、研究開発はもちろん人材強化策に至るまで、さまざまなスキルを必要としている。実は「起業家」に求められる資質には、起業を志さないビジネスパーソンにとっても必要なものが全て詰まっていると言っても過言ではない。私自身は、人材育成の場において、新人のうちから起業家本を教材とした社内研修・教育を実践するのがよいのでは、と心底思っている。メジャータイトルの起業家本についてはおそらく大学生も若いビジネスパーソンも読んでいる可能性が高い。本誌の読者は人材育成に携わる方が中心なので、これから入社してくる意欲的な人材が読んでいるであろう本には目を通しておく必要がある。さて起業家関連書籍だが、特に参考にすべきは、以下の2種類であろう。1.海外・日本の著名起業家関連の著書2.海外・日本の若い起業家関連の著書いずれも起業指南書が中心だが、最近は若い成功起業家の起業ヒストリーも増えてきた。アップルのスティーブ・ジョブズの創業物語は言うまでもなく、Facebookのマーク・ザッカーバーグやザッポスのトニー・シェイ関連の著書には影響を受けている人も多いであろう。1.において特に注目しておきたいのは、ガイ・カワサキとマイケル・E・ガーバーである。ガイ・カワサキはアップルの草創期にマッキントッシュの成功に携わった、いわば起業家たちのカリスマのような存在である。『完全網羅 起業成功マニュアル』『アップルとシリコンバレーで学んだ賢者の起業術』(いずれも海と月社)はぜひご覧いただきたい。マイケル・E・ガーバーの『はじめの一歩を踏み出そう』(世界文化社)も起業家のバイブル本である。かの名著『アメリカCEOのベストビジネス書100』(講談社)でも紹介されている。2.においては、日本の若き起業家のアイデアにもぜひ注目してほしい。本連載でもすでに2014年1月号で紹介しているのだが『世界を変える80年代生まれの起業家』(スペースシャワーブックス)は筆頭格。