OPINION 2 おもてなしと戦略 カギは“売り”の明確化と組織への忠誠心
サービス産業の生産性を上げる方法として、主要サービス企業の顧客満足度調査や、先進事例の公表・表彰を行っているのが「サービス産業生産性協議会」だ。先進事例に見られた共通点や、調査から明らかになってきた生産性とおもてなしのバランスを決めるポイント、今後の日本のおもてなしがめざすべき方向性について聞いた。
生産性向上が課題
──サービス産業生産性協議会の設立経緯と、活動内容を教えてください。
湯浅
2006年に当時の安倍政権時代に策定された「経済成長戦略」の中で、「GDPの7割を占めていながら製造業に比べ生産性が低いとされるサービス産業の活性化が必要」との見解が示されたことを受け、2007年に当協議会が設立されました。主な活動としては、「サービス業の生産性向上」「人材育成」「ベストプラクティス(優れた事例)の共有」「サービス業全体の顧客満足度調査」があります。
──「ハイ・サービス日本300選」もそうした活動の一環でしょうか。
湯浅
はい。2007年から2009年までの3カ年で、日本の優れたサービスを集めて表彰したのが「ハイ・サービス日本300選」です。イノベーションや生産性向上に役立つ先進的な取り組みを行っている企業・団体を表彰・公表するものです。表彰することによって、企業・団体の一層の取り組みを喚起し、また優良事例を広く普及・共有することで、サービス産業全体のイノベーション促進や生産性向上を図ることを目的として実施しました。選定対象は、主として中小サービス業ですが、先駆的で他の企業の模範となる取り組みを行っている大企業も含まれます。また、対象とする「サービス業」は広義のサービス業で、流通(卸・小売)、物流、医療・保険、通信・放送、運輸、金融・保険、対個人サービス(飲食店、旅館その他宿泊所等)、対事業所サービス(情報サービス、物品賃貸業等)などが含まれています。選定に当たっては、(1)科学的・工学的アプローチ(2)サービスプロセスの改善(3)サービスの高付加価値化(4)人材育成(5)国際展開(6)地域貢献の6つの評価項目に基づき、概ね四半期ごとに20~25社程度、3年間で269件を選定しました。