めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第11回 「経済小説」に大いに注目すべし
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須。本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた、情報のプロが最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
「経済小説」を普段あまり意識しない方でも2013年に大ヒットした「半沢直樹」のことはきっとご存じであろう。TVドラマが大ヒットし、池井戸潤の原作本がシリーズ270万部を超える大ベストセラーになり、さらに池井戸の過去の作品も脚光を浴びている。また2013年は出光興産創業者である出光佐三氏をモデルにした『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)もミリオンセラーとなり、経済小説の可能性を大いに感じさせる結果を生んでいる。この2つの現象は、深く感情移入できる名作が多くの読者を動かしたと考えるのが正しいように感じる。私自身も最近の経済小説には大いに奮い立たされることが多い。経済小説はもともと経営者の方が読んでいるイメージが強いが、最近はベストセラー登場に伴い、読者層が拡がる傾向にある。それは素晴らしいことだが、なぜ経営者には経済小説ファンが多いのか、その意味はよく考えておく必要がある。優れた経済小説は、深い洞察と徹底した取材活動により執筆されており、ビジネス書と同様にじっくりと読むことで非常に多くの示唆が得られる。経済小説は、大きく4つに分けられる(あくまで私なりの解釈である)。1.以前より経済小説の世界で活躍している作家(城山三郎、高杉良他)による作品2.比較的最近、経済小説の分野で活躍している作家(真山仁、池井戸潤他)による作品3.企業経営者による作品4.ビジネストレンドを理解しやすくするために小説仕立てで書かれた作品1.や2.については、読み応えのある小説が店頭を賑わしている。真山仁『ハゲタカ』は新装版として発売され、再ブレークしている。3.については多くの企業でバイブルのように読まれているミスミの三枝匡氏による『V字回復の経営』が筆頭格。コンサルタントで起業家でもある長野慶太は切れ味鋭いビジネス書に定評があるが、『神隠し』で第4回日経小説大賞を受賞している。4.については若年層がビジネス書を読むきっかけともなった岩崎夏海の「もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)」が、まずは挙げられよう。経済小説を読む際には、そのモデルとなっている企業があるなら、その企業の経営者の執筆本も併せて読むことをお勧めする。さまざまな局面において、経営者は何をどう判断したのか、主観的な著書、客観的な著書の2つの視点から拝察できる。経営型人事を志向する本誌の読者にはすでに経済小説のファンの方も多いと思われる。ベストセラーは、なぜそれが売れているのかを考えながら読むとよい。また隠れた名著が多いので、本連載でもまたご紹介したいと思う。2014年も優れた作品が数多く登場するであろう。心待ちにしたい。