おわりに “社員を巻き込む健康経営”に必要なこと
健康経営のメリット
「健康経営」は、企業にとって欠かせないものになりつつある。「健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」を意味する健康経営は、「健康経営銘柄」の選定がスタートした2015年ごろから広く知られるようになった。その後、「健康経営優良法人」という顕彰制度も設立され、その対象も中小企業まで拡がり、いまでは企業規模にかかわらず、多くの企業が健康経営に取り組んでいる。
健康経営に取り組むメリットは様々ある。医療費の削減や労働者の高齢化への対応、心身ともに健康な状態で働くことによる生産性向上や業績向上、また健康経営に取り組むクリーンな会社というイメージは企業価値の向上につながり、人手不足時代の採用にも効果を発揮している。
健康経営に未着手の企業がいかに取り組みを進めていくか。それは経済産業省のホームページなどでご確認いただくとして、本特集では、健康経営の推進により成果も出始めている先進企業の事例を紹介している。共通するのは、単に会社側が気を吐くのではなく、“社員を巻き込み”ながら、企業と社員が一体となって推進していることである。その特徴を紹介していこう。
特徴1 会社の“本気”を従業員に見せる
働き方改革と健康経営を両輪で進めている企業は多い。なぜ社員の健康が大切なのか。それにつながる働き方を、どう変えなければならないのか。企業と社員の現状と課題を明確にし、「会社として本気で取り組む」姿勢を従業員に示している点は、各企業の共通点として挙げられる。
たとえばSCSK(CASE 1)では、長時間労働が常態化しており、残業削減など打ち出しても、当初は実現に対して半信半疑の社員が少なくなかったという。だが、「絶対に変えなければ」と考えた当時の社長は、「業績より社員の健康が大事」と明言し、削減できた残業代をすべて社員に還元するといったしくみも導入。社員のための健康経営であり、それを実現するために会社として本気で取り組みたいという姿勢は、徐々に社員にも伝わった。
同社は2015年には就業規則に「健康経営の理念」をかかげ、「会社は社員の健康を第一に考えて責務を果たさなければならない」と明記。会社として永続的に実践していくという姿勢も示した。