連載 調査データファイル [第30回] 雇用・人事システムの構造改革 長時間労働問題を考える①
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雇用・人事システムの構造改革
長時間労働問題を考える①](/wp-content/uploads/temp_image/5334/1551545922.png)
日本の企業ではサービス残業がまん延している。時間外、休日、深夜の割増賃金の支払いに関し、労働基準監督署による是正指導や労働基準法違反による書類送検の件数が年々増加する傾向にある。サービス残業増加の背景には、不況と成果主義の浸透があげられるが、トップダウンによる業務改善を地道に進めるしか解決は図れない。同時に、人事評価の中心となる職場管理職の意識改革も必要になる。
1. サービス残業代35億円
消費者金融大手の武富士が、未払いだった過去2年分のサービス残業代として、従業員約3,000 人に約27 億円、退職者に約8 億円、合計で約35 億円支払っていた事件が報道されていた。大阪労働局は、本社の指示でサービス残業が恒常化していた疑いが強まったとして、労働基準法違反(割増賃金未払いなど)容疑で法人としての同社と当時の労務担当役員ら数人を書類送検している。
大規模なサービス残業が発覚したきっかけは、従業員の内部告発である。退職した元従業員がサービス残業代の支払いを求めて大阪地裁に提訴。和解した際に全社的な調査を行い、過去にさかのぼって支払うことを決定している。同社は毎月の残業時間の上限を、男性25 時間、女性6時間と就業規則で定めていたにもかかわらず、実際の残業時間が100 時間を超える男性従業員も多く、上限を超える時間を出勤簿に記載しないように本社が指示していた。
消費者金融業界では、各支店が資金の貸し寸け、回収の目標額を設定し、その目標を達成するように社員が営業活動を行うという仕事のやり方が一般的であり、ノルマ達成のために大きなプレッシャーがかかる。こうしたプレッシャーは、月末や期末が近くなると特に強まり、長時間労働とサービス残業が恒常化する温床となっている。
さらに、武富士の支店長経験者24 人が、未払い賃金や慰謝料など総額約4億6,000 万円の支払いを求めて、東京、大阪、仙台、福岡の4地裁に提訴した訴状によれば、「サービス残業をさせられたほか、達成不可能なノルマを課されたうえに成果が上がらないと上司から暴言を浴びせられたり暴力を振るわれた」としている。
消費者金融業界は、以前からいろいろと問題の多い業界であるが、訴状の内容が事実であるとすれば、労働基準法の前身である工場法が対象としていた産業革命時代に、タイムスリップしたような企業社会である。当時の企業社会は、悪辣な資本家が労働者を徹底的に搾取する世界。児童や婦人も含めて労働者の再生産を困難にするほどの長時聞労働がまん延したため、ついに国家が工場法を制定して、資本家の暴走を取り締まったのである。