連載 調査データファイル [第31回] 雇用・人事システムの構造改革 長時間労働問題を考える②
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雇用・人事システムの構造改革
長時間労働問題を考える②](/wp-content/uploads/temp_image/5332/1551453232.png)
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、大規模事業所ほど所定外労働時間が長くなっていることが明確になっている。その一方で、年間労働時間が1980 年代後半から減少傾向にあることも示されており、前回指摘したサービス残業の蔓延が裏付けられた格好だ。長時間労働の社会的悪影響を軽減、除去する裁量労働制の導入も、思いのほか進んでおらす、定着に向けた課題も多い。
1. 蔓延するサービス残業
サービス残業に関しては、前回も消費者金融の大手企業が、35 億円もの未払い賃金を支払ったという信じられない事件を紹介したが、9月に入り、お堅い会社である中部電力が、社員約6,500 人に対し未払い賃金計9 億3,000万円を支払ったことを公表している。
今年6月、名古屋北労働基準監督署から労働時問管理の是正勧告を受け、今年1~ 6月分について、全社員約1万7,000 人を対象に調査した結果、巨額の未払い賃金が発覚したというわけである。中部電力によると、1人当たりの支払い額の最高は、424 時間分か未払いだった40 代半ばの係長級社員の223万円であった。なかには、サービス残業が5服)時間にも達する社員がいたという信じられない実態も公表している。
もっとも、同社では今年4月にも名古屋火力センターでもサービス残業が発覚し、名古屋南労働基準監督署から是正勧告を受け、従業員55 人に未払い分約26 万円を支払っている。
今回の未払い賃金の対象者数は、過去最大規模であり、しかも現在、2001年4月~2002 年12 月分についても調査中。未払い賃金額はさらに拡大すると見られている。まさに会社全体にサービス残業が蔓延していたというのが実態である。
労働基準監督署によれば、立ち入り検査を実施したところ、- 部の社員について、入退記録やパソコンの操作記録と賃金台帳に食い違いがあることを確認し、是正勧告をしている。中部電力の労働時間管理システムは、これまで、上司の残業命令や社員の残業報告を、口頭やメモで済ませていた。今後は、全社統一の週間業務予定表に記入するように改善し、さらに10 月からは、社員本人がパソコンに残業報告を記録し、上司が確認するという二重チェック体制に改める計画である。