新連載 人材と組織の強みを活かすAl 第1回 欠点探しではなく 長所を伸ばす変革の新手法

多くの組織では、得てして「どこに問題があるか」という欠陥追及にエネルギーを注ぎがちである。しかし、これだけでは組織の活力はそがれてしまう。本連載で取り上げるAI は、「プラスを引き出す問いかけ」によって人や組織に内在する力を引き出し、会社に活力を生み出す変革の手法。日本ではまだあまり知られていないが、海外では既に数多くの成功事例があるという。今月から1年間にわたりAI について詳しく紹介していきたい。
AI とは何か?
普通、AI と聞くと、Artificial InteⅢgence、つまり「人工知能」を想い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
専門家としての判断を可能にするエキスパート・システムや、学習するニューラル・ネットワークなど、コンピューター分野でよく使われる言葉です。
本連載で取り上げていくAI とは、Appreciative Inquiryの略語です。日本語にうまく置き換えにくいのですが、私たちは「プラスを引き出す問いかけ」と訳しました。
それは「問いかけ」によって人や組織、あるいは地域社会に内在する力を引き出し、理想を実現させて、組織を活性化する発想とコミュニケーションの手法を指します。「質問するだけで、会社が元気になる」なんて、イメージしにくいかもしれません。ところが、アメリカ、イギリス、ブラジルなど、たくさんの国で、数多くの成功事例が報告されています。
そもそもは、米国オハイオ州クリーブランドのケイス・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University) で組織行動学を指導するDavid L. Cooperrider 教授によって、1987 年に提唱されたものです。
AI の目的は、組織の可能性を広げていくための発想やアイデアの幅を広げることであり、組織のすべての構成員が意志を1つにし、全員の求める組織像へのビジョンを描き、それを実現、実践していくことです。 Arの手法を習得した専門家がファシリデーターとなり、組織の構成員全員の参加によって2~ 3日のAI ワークショップを行うのが典型的な進め方です。そこまで時間が確保できない企業でも、「AI 的な発想と手法」を研修に取り入れるケースが増えています。