ケース3 プロシード 異質から力を引き出すには 共通ルールとプロセスマネジメントが必要
異質な人や考え方を認め、それを組織の強さにつなげるダイバーシティーの実現には、2 つの壁がある。まず差別や偏見、排除意識など1 人ひとりの心の「内なる壁」を越えること。次に「組織の壁」を越えることだ。これは、自らの生い立ちや、思想・体験の深さがモノをいう。では、なぜいま、このようなダイバーシティーが日本に必要なのか?プロジェクトマネジメントやプロセス管理を得意とする自称“アドベンチャー企業”プ囗シードを率いる西野弘氏に、氏の価値観や行動によって培われた「ダイバーシティー・マネジメント」の展開について伺った。
異質なものとの間の「壁」を越えるには
「異質なものとの交流が起こらないと、次のステージへ進化しない。だから日本は停滞してしまった」と、プロシード代表取締役・西野弘氏は言う。同社はコールセンターの生産性監査、TT 調達のコンサルティング、ISO 導入支援、デジタル教育などを手がける「アドベンチャー企業です」(西野氏)。
企業トップとしての顔は西野氏のほんの一面に過ぎず、自らダイバーシティーの精神を体験し、体現した大だ。学生時代に留学したのが縁で、スウェーデン王国王立サムハル社会福祉事業団の日本代表を務める。同事業団は2万9,000 人の何らかの障害のある人々を雇用している、世界でも稀有な企業体である。また、日本における障害者自立支援組織である財団法人プロップ・ステーションの理事でもある。さらに非常勤で富山大学の講師を務め、黒板の発明以来初めて、携帯電話を取り入れたユニークな授業を行って注目を集めた。
このような経験を踏まえ、西野氏は日本社会、そして企業がいかに異質を排除する組織であるかに警鐘を鳴らす。なぜ、日本では異質なものとの交流がうまくいかないのか、異質なものとの間の璧を越えるにはどうすればいいのか。
異質なものへの差別と攻撃
その典型が帰国子女いじめ
「日本人は異質なものに出合うと自分と比較しようとする。そこに優位性を見出せれば満足し、そうでなければ攻撃しようとするのです」
その顕著な例が1970 年代後半から問題化し始めた「帰国子女いじめ」である。当時、西野氏は大手商社のサラリーマンとして働きながら、ボランティアで「帰国子女更生プログラム」を開始した。
欧米の教育を受けた子どもたちは、自立した個として大人に対等なかかわりを求めるのが当然と感じる。ところが日本の学校教育では、個は集団に埋没し、生徒は先生に従うことを求められがちだ。異質な発想や振る舞いを持つ帰国子女に対し、周りの子どもによるいじめや無視といった事態が少なからず起きた。このギャップから心を閉ざしてしまう帰国子女が多くなっていったのだ。そこで西野氏は、欧米の教育現場で広く使われていた「ドラマ手法」が役に立ちそうだと考え、プロの演出家の指導を仰いだのである。
「いじめられていた帰国子女が、自分のことをドラマとして演じてみることで、自分自身ばかりでなく、それを見た周りの人間も気づきを得ることができるのです」
「国際化の美名のもとに子どもを犠牲にしていいのか!」と某大手銀行の財団に訴え、2,000万円の活動資金を得た。会の運営は子どもたちに任せ、自分は裏方に徹した。
「ブラザー・シスター制度と称し、帰国子女の先輩をカウンセラー役にしました。自分たちも同じ苦労をしているから、親身になってアドバイスできるのです」

