連載 新しさは足下にあり 第4回 「上善若水」を実践する
水に「不争の精神」を学ぶ
「上善若水」。酒の宣伝ではありません。
老子の言葉です。最も良い人間のありようは、水のようになることだ、という意味です。
中国は南船北馬といって、北部は遊牧民的生活の地でしたから、どうしても北極星信仰の地となって、儒教の広まりが見られます。
これに対し南部は、湖沼や河川の多い農耕民族的生活の地で、太陽信仰、老荘思想の本拠地ともいえます。
したがって老荘思想と水とはとても縁が深く、やがて水のあり方に理想さえ見出したのです。
老子は、次のようにも言っています。
「水善利万物而不争」。水はよく万物を利して争わない。
人間にとって水は、最も不可欠なものであります。それはどの恩恵を人間に与えているにもかかわらず、水はそれを誇ることも恩を着せることもなく、ひたすら低いところ、低辺のじめじめしただれもが嫌がるところに居るのです。
だからこそその存在が光るのでしよう。さらにいえば、水は栄養分に富んだ飲料として近ごろは最大の戦略商品ともいわれています。