連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第35回 6 5 歳雇用延長の実現に向けて②
年金改革に呼応するように、高年齢者雇用安定法の改定が予定されている。改定のポイントは、従来努力義務であった定年の引き上げや、継続雇用等の65歳までの安定した雇用確保のために必要な措置の導入が義務化されたこと。 2013 年までには何かしらの形で65歳までの雇用機会を確保しなくてはならないが、デフレの影響による人件費負担の増加により、雇用延長に向けた視界は不良と言わざるを得ない。
1. 年金改革に連動した雇用延長
今回議論されている公的年金改革では、抜本的な改革は先送りされ、負担率の上限目標をとりあえず決め、給付水準をあの手この手で下げようとしている。国民年金の保険料の未納者および猶予者を合計すると、その割合は半数近くにも達しており、穴の空いた国民年金を厚生年金保険料で補填するという構図になっている。
さらに、保険料を徴収しやすいところから取るということで、パートタイマーの適用範囲を拡げる案が浮上したが、今回は見送られることになった。ただし、徴収そのものを断念したわけではなく、時期を見て再度法案を提出するということになっている。
ところで、既に厚生年金に関しては、基礎年金部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられつつあり、男性は昭和24 年4月2 囗以降生まれから、女性は昭和29 年4月2日以降生まれから、それぞれ65 歳支給となる。また、基礎年金部分に続いて報酬比例部分も段階的引き上げが決まっており、男性に関しては、昭和28 年4月2日以降生まれから支給開始年齢が61 歳支給と引き上げられ始め、昭和36 年4月2日以降生まれから65 歳支給となる。女性は男性よりも5年遅れで引き上げられる。
こうした年金改革が進展すると、現在一般的となっている60 歳定年制では、定年退職と年金支給開始の間に空白が生じることになる。 60歳以降での転職がきわめて厳しい実態を考慮すれば、同一企業ないしは企業グループでの雇用延長が、社会的に求められる。いわば企業の社会的責任として、雇用延長に努めよというわけである。
2. 高年齢者雇用安定法の改正
定年制など高齢者雇用に関連した法規制は高年齢者雇用安定法に定められているが、こうした社会情勢の変化に対応するために、同法の改正が予定されている。最近、労働政策審議会の答申が明らかにされたが、その内容は以下のようなものとなっている。
企業にとって最も負担となる法定定年年齢を定めた第8条の改正は見送られ、現行の60 歳定年が踏襲されたが、第9条は努力義務が義務化(罰則なし。助言、指導、勧告等の行政指導) された。すなわち、従来努力義務であった定年の引き上げ、継続雇用制度等65 歳までの安定した雇用の確保を図るために必要な措置(制度) の導入が、義務化されたのである。具体的には、①定年の定めの廃止、②定年年齢の65 歳までの引き上げ、③65 歳までの継続雇用制度の導入、のいずれかの制度を導入しなければならない。