連載 人材と組織の強みを活かすAl 第4 回 AI 実践のプロセス「4- D サイクル」と 第1 段階Discovery

Al (Appreciative Inquiry 、プラスを引き出す問いかけ)は、人や組織に内在する強みや長所、過去の輝かしい経験や「伝説」などを発掘し、これらを「リソース(未来を築く材料、活力源)」として活用し、自分たちにとって最も望ましい未来像を実現するための参加型プロセスだ。この活動に組織のすべての構成員が主体的に参加することにより、組織全体の結び付きが強まり、目標達成の勢いが大きくなる。今月号では、AI を導入する際の全体の流れである「4-D サイクル(Four D Cycle)」を概観し、第1段階のDiscovery について説明する。
4-D サイクルとは?
AI は、組織をポジティブな変化へと導く「4-D サイクル」という4つのステップからなるプロセスによって実施されるのが典型的な流れである。
Discovery、Dream、Design、Destiny
4つの「D」で始まるステップの概要は、次の通りだ。
1. Discovery (探求、発見):組織全体で、インタビューを通してお互いの成功体験、人や組織に内在する強み、ポジティブな感情を思い起こすようなインタビューを行う。それを通して、お互いや組織の価値を知り、そこからさらに深める。
2. Dream (理想、イメージング):思考や発想の枠を超え、グループごとに理想の組織イメージを展開。理想像のためのキーワードを模索する。
3. Design (設計、構想):理想とする組織の姿を実現化させるための行動指針や提言を作成する。
4. Destiny (実現、活用):理想の組織や個人個人の活動を現実化させるために、構成員自らが個人または組織単位でのアクションプランやプロジェクトを立案する。立案されたプ囗ジェクトごとにチームを結成し、具体的な活動へと移していく。
この流れだけを見れば、通常の組織改革の取り組みと大差ないような印象を受けるが、AI の大きな特徴は、これら4つのステップのどの段階でも、「問いかけ」や「対話」が頻繁に行われる、というところにある。
「客観的VS主観的」という図式
組織のパフォーマンスを示すデータの収集や分析、問題点の洗い出しといった「客観的なアプローチ」ではなく、組織のメンバーが、「過去・現在・未来」をどう認識し、どう行動しようとしているかという「主観的なアプローチ」に力点が置かれているのだ。
実は、この「客観的vs主観的」という図式自体が怪しい、とCooperrider博士は考えている。つまり、どのような目的・方法で「データ」を取ろうとするのか、という計画を考えた時点で、実は「暗黙の仮説」が取り入れられていて、ほんとうの意味で[ 客観的なデータ]はあり得ないというのだ。
例えば、ある組織が、中途退職者の問題を抱えていたとして、それを解決しようとすれば、同じ年に入社した社員の何%が退職したかを調べ、グラフに表すことになるだろう。しかし、根本の問題は、社員が辞めたか辞めないかではなく、会社の将来性に対する信頼(または不安) だったりすることもある。しかし、いくら「客観的なデータ」を集め、分析しても、人間の内面的な動因は、やはり主観的に推測するはかないのだ。