連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第36回 65 歳雇用延長の実現に向けて③

2007 ~10 年にかけて、いわゆる団塊の世代が60歳定年を迎える。ある調査によれば、この間で労働力人口が188万人減少する、という結果も出ており、今後の労働力不足が現実味を帯びてきた。人手不足を補う意味からも、高齢者雇用に向けての取り組みは避けて通れなくなってきたが、高齢者の雇用・就業システムを整備するに当たっては、あらゆる面で個人差の大きい高齢者の、多様な就業ニーズに対応していくことがカギとなる。
1. 年金改革に連動した雇用延長
公的年金の改革に連動して65 歳雇用延長の法制化が進められようとしている。こうした社会改革が進行する原因は、長期的には少子化であるが、短期的には団塊の世代の高齢化である。既に決まっている厚生年金基礎年金部分での支給開始年齢の段階的引き上げも、団塊の世代の高齢化と連動している。
戦後間もなくの1947 ~49 年の3年聞に生まれた団塊の世代は、まさしくベビーブーマー世代であり、経済活動に対して人口が相対的に過剰になる人囗圧力は並外れて大きい。最近の新生兒が約110 万人であるのに対して、団塊の世代は各年に約220 万人の人口規模を擁し、3世代合計では実に約670万人の塊となっている。
こうした巨大な塊の世代が、3年の間に次々と定年に到達するわけであるから、60 歳以降を定年退職させて隠退生活に移行させるのか、あるいは何らかの形で働き続けるのかによっては、経済に隕らず社会全体に大きなインパクトを与えることになる。大半が隠退するというシナリオは、公的年金の開題もあって社会的な許容度はそれほど大きくない。
他方、全員が定年退職するというシナリオも、野村総合研究所の試算によれば、団塊の世代が60 歳定年を迎える2007 ~10 年にかけて、労働力人目は188 万人減少、人件費も企業全体で4年間に約3兆6,000億円の増益要因とはなるものの、技術・技能の伝承が行えないといった問題に加えて、人手不足になる可能性すらある。団塊の世代にもう一踏ん張りしてもらう必要があるが、老害をまき散らす働き方だけは阻止しなければならない。