連載 新しきは足下にあり 第9回 先端経営は「老荘思想」から

求められる地球規模の視点

現在の企業経営を取り巻く最大の問題は何かといえば、急激な転換を強いられている経営の実態に合った21 世紀の礎になるべき経営思想が見当たらないということです。実態の方が先行してしまっているともいえます。例えば現行の企業経営は、設立間もないベンチャー企業といえども、活動範囲はとっくに国内を越え、中国だ、シンガポールだとグローバルになっています。中堅企業以上の規模の企業では、仕入れ先、販売先、ともに世界中というのが常識になりました。
ということは、グローバルな視点、地球規模の視点が要求されていることを意味します。しかしこれをうまく治めるためには、さらにもう一段広い視点、つまり地球が客観的に眺められる位置に立って経営をしなくてはなりません。あたかも宇宙飛行士が眺めるように地球を宇宙空間に浮かぶ球体として見ることが必要なのです。
なぜか。環境問題を考えれば明瞭です。中国の排気ガスの問題は中国の国内問題であるばかりでなく、地球全体の問題にまでなってしまう危険性があります。したがって自動車会社は地球の周囲の大気のメカニズムを知る必要がありますO もしこうしたことを無視して販売を続ければ、売り上げは驚異的に伸びるかもしれないが、地球の破壊者として重い罪を背負い続けなければならないことになります。これはご承知のようにオゾンホールの問題も、地球温暖化の問題もしかりです。
しかし残念ながらいまだわれわれは、宇宙大の視点に立った経営思想を持っていません。さらに経営の実態は、次のステージに進んでしまっているといえます。その資産の活用の重要な部分が、「見えない資産(invisible assets)」「無形の資産(intangible assets)」などになり、知的(intellectual) な資源が活動の原資になるなど、見えない、形のないものが主流になってきましたoしかしいまだ現在の経営思想の対象は見えるもの、形のあるものに隕られています。
なぜかといえば、西洋思想は、見えない、形のないなどは非科学的として対象としてこなかったからです。