連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第40回 労働関連法改正への対応③
労働紛争処理の効率性を最も高める手段は、紛争を未然に防ぐこと。だが、労働組合もなく社長によるワンマン経営が行われている企業では、会社ぐるみで違法行為をするケースも少なくない。労働紛争の発生は避けたいところだが、起きてしまえば、企業にとっても労働者にとっても早く解決したいもの。そのための制度として、いま、労働審判制度が検討されている。
1. 労働紛争の金銭的解決
企業にとっても労働者にとっても、労働紛争はできるだけ早く解決したいものである。増加する個別労働紛争を速やかに解決するために既に個別労働紛争解決制度が施行されているが、新たに検討されている労働審判制度は、紛争の迅速かつ効率的な解決の手段として期待が持てる。
司法制度改革推進本部の労働検討会において検討されている労働審判制度は、労働調停制度を基礎としつつ、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識・経験を有する者による審理・合議によって、権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決する新しい制度であるとされている。
同制度は、地方裁判所における手続きとすることが考えられており、当事者は訴訟制度と労働審判制度とのいずれを申し立てるかを選択できるものとしている。労働審判では、当事者間の権利関係の確認、金銭の支払い、物の引き渡し等のほか、紛争解決のために相当と認める事項を定めることができ、3回程度の期日で事件の処理が図られるような手続きがイメージされている。実現すれば労働紛争解決の効率性が、飛躍的に高まるものと思われる( 図表)。
2. 審査期間の迅速化が求められる労働委員会
他方、集団的労使紛争を解決するための地方労働委員会、中央労働委員会、地方裁判所、高等裁判所、最高裁判所の五審制は、時間とコストを度外視した制度であり、改革せざるを得ない状況に置かれている。労働委員会の審査期間を見ると、平成初期は地方労働委員会における初審が1,290 日、中央労働委員会における再審査が1,345 囗であったが、その後やや短縮されたとはいうものの、平成11 年~13 年平均で初審が797.0 日、再審査が529.7 日となっている。なお、労働関係民事通常訴訟事件の平均審理期間は、12.0 月となっており、労働委員会の審査期間が異様に長いことがわかる。