連載 現場支援のe-HRM 第3 回 システムの「集約」と「分散」が 成果主義を機能させるポイント
多くの企業が成果主義型の人事制度へと変革を進めているが、期待した成果が上かっていない企業は少なくない。成果主義を成功に導くための一つの鍵を握るのが、人事管理システムの有効活用である。今回は日本オラクルでマーケティングを担当する吉田周平氏に、成果主義時代における人事管理システムの要件について解説していただいた。
人事部門と現場が人事業務を分担する時代
昨今、多くの企業が従来の年功型人事制度から成果主義に基づいた制度へ変革しようとしている。
かつての高度成長の時代は、モノを多くつくればそれだけ売れる時代だっだため、均質な人材をいかに多く育てるかがテーマだった。そこでは、どれだけ決められたことを確実にできるかが評価のポイントとなるため、勤続年数がそのままパフォーマンスの向上につながり、年功的な報酬体系がマッチしていた。
しかし昨今は、ただつくれば売れる時代ではなくなっている。顧客ニーズは多様化し、ビジネス自体のサイクルも速い。そのため、人事のテーマは、従来の均質化政策から、「個」を伸ばしていくような政策にシツトしている。評価のポイントも、決められたことをやるのではなく、企業価値に結び付けられるような仕組みなり競争力を自ら考え、生み出せる人材を評価しようという流れになっている。また、それぞれの現場で起きていることに迅速に対応していかなければならないため、従来は一律だった目標も個々に異なってくる。こうしたことから、個々の目標達成のために必要な育成を行い、実際に経営目標や部門目標にどれだけ貢献できたかによって、成果に見合った報酬を与えていくというやり方が主流になりつつある。
では、こうした成果主義の流れのなかで、人事オペレーションを担うのはいったいだれだろうか。従来の人材均質化政策の下では、あらゆる人事オペレーションを人事部門が担ってきた。しかし、直面するビジネス環境によって目標や人材育成のゴールが変化する状況において、人事部門が人材に対してどこまでコミットできるかが問題になる。それぞれの従業員が異なる目標に向かって異なる育成を必要とするなかで、人事部門がそのすべてにコミットすることは困難である。そのため、各現場が人事オペレーションの一部を担う必要性が生じているのではないだろうか。具体的に言えば、期待される役割に対して、どの程度パフォーマンスが発揮できているかを、現場で評価するということだ。
しかし、それにも困難がつきまとう。なぜなら評価する立場の現場のマネジメントが、これまでそうした枠組みのなかで評価されてこなかったからだ。さらにいえば、その評価は、従業員に対して差を付けるための評価ではない。マネジメントが部下に対して何を求めているかを明確にし、評価によって生じるギャップを解消できるように導くことが必要だ。つまり、現場の人材育成である。
顧客との会話のなかでも、人材育成について全社的なプログラムで実施することは困難であり、事業部などの単位で人材育成を図っていく必要があるという声は多い。現場のマネジメントが従業員を評価し、育成につなげ、彼らのキャリアプランも一緒に考えながら、人材配置にも参團していくような人事オペレーションが求められているのである。
それでは人事部門は何をすればいいのだろうか。考えられるのは、人事オペレーションのなかで人事部門がよく把握している部分と現場がよく把握している部分を切り分けて分担することだ。ビジネスの現場で何か起きていて、それに対して取るべき行動や必要となる人材、組織づくりは現場のライン部門がよく把握している部分といえる。