ケース2 不二越 次代に残すべき高度技能を確実に伝承 技能者の動機づけにも配慮する
高度熟練技能をいかに効率良く伝承していくか?これは製造業が抱える課題のーつであろう。いま、技能伝承を目的にマイスター制度を導入する企業が多いが、そのなかのーつに不二越がある。不二越は2001 年4 月、マイスター制度を導入し、高度熟練技能の伝承に着手した。組織として技能伝承に取り組むための仕掛けもさることながら、能力の習熟に応じて評価・処遇が決まる人事制度に改定するなど、技能者の動機づけにも配慮が見られるのが特徴である。
技能に支えられた発展の歴史
「不二越という会社は何をする会社なのか」を一言で説明するのは難しい。それは、社名から事業を想像しにくいことに加え、同社の事業領域が広いことも起因している。
そもそも不二越は、1928 年に工具の国産化を目指して創業。以来、特殊鋼やベアリング、工作機械、油圧機器、工業炉、コーティング、ロボット、自動車部品と事業を拡大し、現在に至っている。このように1つの会社で肝上(材料) から川下(製品) までの領域を持ち、それらの開発・製造・販売を手がけるのだから、「一言で説明するのは難しい」というのも理解いただけるのではないだろうか。
この難しさは、一見しただけではつながりが見えにくい事業と事業の関係も影響しているように思える。だが、同社の歴史を遡れば、関係性ははっきりする。例えば特殊鋼事業は、最適な材料による工具づくりを指向したことから始まったものであり、工作機械事業は、工具・ベアリングの製造設備を内製化したことが始まりである。また、ロボット事業は、工作機械の自動化技術と油圧機器の制御技術を応用し、事業化したものである。他の事業についても、それまで培ってきた技術を応用し事業化してきたものばかりだ。
以上のことから、不二越は技術力をベースに多角化を推進してきた会社といえる。だから、「何をしている会社なのか」と問われれば、「それまで培ってきた技術を基に新事業を創造している会社」という解答が当てはまるのではないだろうか。
とはいえ、技術力だけでは事業は成立しない。事業は価格競争力やマーケティングカ、営業力など、さまざまな要素が絡み合って成り立ち成長していくものだが、特に重要な要素が、技術を形に仕上げていく「技能力」である。これは不二越に隕らず囗本の製造業全般にいえることだが、いくら優れた技術でも、技能の力が伴っていなければ、形にはならない。その点でいえば、これまで技術力を基に新事業を創造してきた不二越の歴史は、高度な技能に支えられ成長・発展してきた歴史、と言うことができる。
高度技能を短期間で、確実に伝承する仕掛け

だが、このように高度な技能に支えられ成長・発展してきた不二越は、危機に直面しようとしていた。危機とは、高度経済成長時代に大量採用した技能者があと数年のうちに定年退職を迎え、熟練技能が喪失してしまうこと。このまま何も手を打だないでいては、国内でのモノづくりが成り立だなくなるのでは?
という経営の根幹を揺るがしかねない事態に陥ろうとしていた。
加えて、99 年に打ち出した「選別と統合」という経営戦略を遂行するうえで、経営資源を競争優位にある商品と基盤商品に集中する必要があった。技能も例外ではなく、技能者減少が確実な状況にあるなかで、いかに少数精鋭化を進められるかが大きな課題となっていた。

