連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第41 回 成果主義を問い直す①

成果主義に対する混乱が収まらす、異論・反論が続出している。それはさまざまな統計調査の結果を見れば理解できるところであり、「間違いだらけの成果主義」が横行しているといった感じだ。原因は成果主義そのものの欠陥か、それとも運用方法の問題か? 状況をつぶさに見ていくと、両方に問題が多いことがわかる。
1. 異論・反論の続出

年功制に代わる人事制度として導入が進展している成果主義に、異論・反論が続出している。『虚妄の成果主義』(高橋伸夫著、日経BP 社) といった刺激的な本が出版されたかと思うと、今度は元人事部社員が書いた『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』(城繁幸著、光文社) といった暴露本が刊行されるといった具合である。成果主義は袋たたきといった観を呈している。
各種の調査結果も同じであり、成果主義に対する不満や懐疑的な意見が、かなりの割合を占めている。日本経済新聞社が行った調査によれば、「成果主義はあなたの職場の人間関係にどのような影響を与えていると思いますか]という問い対して、[職場の士気の低下](36.7%) が「職場の士気の向上」(21.8%) を15 ポイント近く上回っているo また、「パワーハラスメントの増加」も17.1% を占めている(図表1)。
労働政策研究・研修機構が最近行った調査結果も、同じように否定的な回答が、かなりの割合を占めているo「3年前と比べた処遇や評価に関する納得感、公平感」を尋ねた回答結果では、「評価の賃金・賞与への反映に対する納得感」について、「低下した」(29.9%) が「高まった」(9.7%) を大幅に上回っている。また、「仕事の成果や能力の評価に関する公平感」についても、「低下した」(20.0%) が「高まった」(10.9%) を上回っており、同様に「目標達成に向けた努力への評価に対する納得感」も、囗氏下した」(19.1%) が「高まった」(mo %) を上回っている。なお、「設定された目標への納得感」については、「高まった」(13.8%) が「低下した」(12 2%) を若干上回っている(図表2)。
以上のように調査結果から見る限り、成果主義は職場の士気を高めるどころか低下させており、パワハラが増加してたまったものではない、といった傾向が強まってきていることがうかがえる。また、評価結果の給与への反映に納得できない、成果・能力の評価に公平感が欠ける、目標達成への努力についての評価の納得感が欠ける、といった意見の社員が増加してきている。悪平等の年功賃金を修正するために導入した成果主義が、現状では当初の目的を達成するどころか裏目に出てしまった、というのが現状のようである。