連載 人材と組織の強みを活かすAl 第11 回 David Cooperrider 博士の人と業績

思想と思想家の人生は切っても切り離せない。人と組織の内側から最善、最高のものを引き出していくAIの思想の原点を考えるうえで、創始者であるデイビッド・クーパーライダー教授の経歴をふりかえってみたい。
日本での体験がきっかけに
イリノイ州のAugustana College で心理学を専攻していた彼は、3年時の夏に日本を訪れる機会を持った。人間社会における文化の多楡既に関心を持っていた彼は、東京大学に研究生として在籍し、『甘えの構造』で知られる土居健郎先生、『タテ社会の人間関係』で有名な文化人類学者の中根千枝先生の指導を受けたという。いまから30 年ほど前のことになる。
「仕事帰りの会社員が、居酒屋でも会社の話を続けていました。日本社会の特徴といわれていましたが、組織に対するコミットメントの高さを実感したんです。組織と個人の関係、について関心をもっかのは、当時の体験が一つの契機になったのではないかと思います」
また、広島を訪れた体験も、クーパーライダー青年にとって大きな衝撃を与えた。世界で初めて原子爆弾による破壊が行われた場所「原爆ドーム」を訪れて、彼は「気づきの爆弾(AnAtomic Bomb of Awareness) 」を得た。「この地球に命を受けていることの尊さ、また私たちが世界を共有していくためにお互いが持つべき責任感」を、その瞬間に意識したのだと言う。
「原子爆弾は恐ろしい破壊力を持っているが、それと同じくらい強力に、人と人との関係を形成するポジティブな方法はないだろうか?」という疑問を抱いたことが、彼の人生に大きな影響を与えた。