連載 調査データファイル 雇用・人事システムの構造改革 第43 回 成果主義を問い直す③

労働政策研究・研修機構が行った調査結果によれば、成果主義の導入に関して、労働者は意外なほど積極的であることがわかる。ただし導入に関しては不安があり、その最大の理由は、「上司や管理者が正しく評価するかわからない」。つまり多くは、運用方法に不安を感じているといったところが実態である。
1. 成果主義賃金は賛成だが不安

ジャーナリズムや学者・評論家に評判の悪い成果主義賃金も、それを直接適用される労働者自身の考えは、意外なほど積極的である。労働政策研究・研修機構が行った調査結果(「企業の人事戦略と労働者の就業意識に関する調査」2003 年)によれば、「成果主義的な賃金体系」に対する労働者の考え方で最も多いのは「賛成だが不安」(60.1 %)であり、「賛成」(27.6 %)を加えると約9割近い87.7 %が賛成しており、「反対」はわずか7.1%である。
さらに、成果主義的な賃金体系に反対や不安とする理由としては、「上司や管理者が正しく評価するかわからない」(79.0 %)の回答率が非常に高く、これに次いで「仕事によっては能力が発揮しにくい」(51.0 %)、「収入が不安定になる」(37.8 %)の回答率が高くなっている。これに対して、「同期入社の間で賃金格差が拡大する」(5.7 %)という回答は非常に少ない(図表1)。
こうしたアンケート結果を見る限り、労働者は成果主義賃金を拒絶しているわけではなく、むしろその導入に関しては積極的である。ただし、導入に際しては不安がある。不安の最大の理由は「上司や管理者が正しく評価するかわからない」ことであり、さらには仕事の内容によっては成果主義になじみにくい、つまり成果が明確な形で表れにくい、あるいは成果が短期的には表れにくい、といったことを不安に思っている。