海外情報 AI Conference 『第2 回 AI カンファレンス』 マイアミからの報告(前編)
2004 年9 月フロリダ州マイアミで、第2 回AI カンファレンスが開催された。AI(Appreciative Inquiry)は、04 年、本誌連載でもおなじみの「インタビューをベースにした参加型の組織開発手法」であり、旧来の問題解決型アプローチではなく、「個人と組織の強みを引き出す」発想に立ち、近年、大きな注目を集めている。20 カ国から集まった総勢500 名の参加者は、4 日間にわたって、各地で実践した体験や成功事例を共有し、AI のさらなる展開のビジョンを語り合った。今回は、このカンファレンスの概要を紹介し、分科会で行われた事例の詳細については次号で報告する。
AI3年間の足跡
第1回のAI インターナショナル・カンファレンスは、2001 年9 月、同時多発テロ事件の2週間後に、ボルチモアで開催された。決行か中止か、深刻な議論を経て、開催を決断。主催者も驚く650 名の参加者が集まった。そして、企業がより良い地球社会を建設するために、これまで以上に積極的な役割を果たすべきであるというBAWB(Business as Agent of World Benefit)というテーゼが提起された。
それから3年の月日が流れ、AIはもはや「一つの珍しい試み」という位置づけではなく、多くの企業で素晴しい実績を残す「組織変革のスタンダードの一つ」へと成長を遂げていた。北米だけでなく、ヨーロッパやオーストラリア、南アフリカなどでも、着実にAIの専門家の数が増え続け、国境を超えた交流も活発化している。
さらに、04年の5 月には、AIの創始者であるデービッド・クーパーライダー博士がASTDで表彰され、日本での注目度も急上昇した。
続く6月には、アナン事務総長の呼びかけにより、ニューヨークの国連本部で「Global Compact」会議が開催され、世界各国から30 人のCEO(最高経営責任者)たちが集い、世界平和のために企業が果たす役割について、AIのセッションが開催された。
そのなかでは、パレスチナの生産物を、サウジアラビアの企業が輸送手段を提供し、イスラエルで販売するという異例のビジネスプランが提起されるなど、画期的な成果が生まれたのだが、メディアではほとんど報じられずじまいだった。しかし、世界のビジネスリーダーの間に、AIのプロトコール(進行手順)と効果についての理解が広まり、平和建設のシナリオについて、ビジョンを描く機会が持たれたのは、画期的なことだったと言えよう。
AIは、企業の組織変革手法としてばかりでなく、地域や国家、あるいは地球社会の未来を構想する有力な方法論として認知されつつあるのである。
プログラムの構成
日程表をご覧いただければわかるように、4日間のスケジュールは、大きく3つの部分から構成されていた。
(1)プレ・カンファレンス・ワークショップ
(2)全体会(Plenary)
(3)分科会(Roundtables)
主に2、3日目の午後に組まれた分科会は、一部、朝7時台にも開催されており(Sunrise Sessions)、テーマ・内容も多岐にわたり、どこに参加するか迷い、目移りするほどだった。また、複数の分科会が同時開催されるため、参加できなかったセッションに関しても概略がわかるように、レジュメだけでなく、発表用のパワーポイントのスライドまで、参加者への資料(厚さ4センチ)として配布された。
他のマネジメント系のカンファレンスと比較した時に、資料やノウハウを惜しみなく情報公開するところは、AI関係者の際立った特徴の一つと言えるだろう。「学習する組織」を実現するためには、成功体験の共有が不可欠で、gamesmanship(抜け目なく駆け引きする態度)ではなく、win-win を目指す協働的なスピリットが求められる。そんな、積極的な学び合いの雰囲気が、そこかしこに息づく4日間だった。