短期連載 第2 回 チームに学習をもたらす 『ダイアログ』の進め方
ダイアログでは、参加者が椅子を丸く並べて座る。丸く座った場で、一人ひとりと会話をするというよりも、話し合いの場の中央に向けて語りかけるような話し方を心がける。それはあたかもキャンプファイアーを囲んで座っている人々が、中央の火に向かって語りかけるようなイメージである。今回は、ダイアログをもたらす4 種類のプロセスのうち、「聞く」と「尊重する」について説明する。
ダイアログの座り方、進め方
ダイアログでは、机を置かずに椅子だけを丸く並べて座るのが基本型です。丸く座ることは参加者の間に上下関係がないことを象徴しており、参加者にはお互いの顔の表情や身体の動きが見えるので、単なる言葉の次元を超えたトータルなやり取りが生まれます。また、丸く座るという形によって生まれるエネルギーは、一体性や、共同探求をもたらすのに適しています。みんながダイアログできるようになってくると、机を外して丸く座るという形に頼る必要はなくなりますが、慣れれば慣れるほど、この基本形に戻るのは、とても心地よいものです。
ウイリアム・アイザックスは、ダイアログを、「周辺とではなく、中心と行う会話」と説明しています。ダイアログの参加者は、丸く座った場で、円周上にいる一人ひとりの参加者と会話をするというより、話し合いの場の中央に向けて語りかけるような話し方を心がけます。これを、キャンプファイアーを囲んで座っている人々が、中心に燃えている火に向かって語りかけるというイメージで説明する人もいます。
こうして、参加者が全体の中心に向けて語ると同時に、自分自身の意識のなかでも、自分という存在の核心部分からくる声に耳を傾けるように心がけます。この作業に慣れてくると、意識の表面の波立ちに影響されずに、心の奥にある静寂に意識を合わせることができるようになります。これは、「今」に集中した状態であり、武道で言えば、いつでも外敵からの攻撃に対応できる、「センタリング」と呼ばれる状態と通じるものがあります。
ダイアログを行う時は、前もってテーマを決めていないのが普通ですが、もちろん、何かのテーマについて、ダイアログを行うことも可能です。ダイアログに慣れてくると、テーマを決めずに話し合いを始めることによって、参加者全員にとって、その時に一番話し合う必要のあることが話し合われるようになります。
ダイアログでは、基本的にどんなことでも話し合うことができるようにします。問題を抱えた組織では、組織に機能不全を引き起こしている原因は、話し合うことがタブーとなっていて、タブーとなっていることすら話し合うことができないことが多いものです。
組織のなかに、ダイアログの経験者がいない場合には、こうした問題を扱うスキルを備えたファシリテーターを招いて、「ダイアログ」、「メンタルモデル」、「システム思考」(*1)に関するセッションなどを織り込んでもらいながら、参加者がダイアログができる力を身につけていくとよいでしょう。
1回のダイアログ・セッションは、2時間以上が普通です。それよりも短いと、話が十分深まらないままに終わることが多いようです。また、ウイリアム・アイザックスは、初めての人がダイアログが有効かどうかを測るには、少なくとも同じチームでダイアログを3回以上経験してから判断することを勧めています。
(*1)「メンタルモデル」や「システム思考」については、『最強組織の法則』(徳間書店)『システム・シンキング』(JMAM)『フィールドブック:学習する組織「5つの能力」』(日本経済新聞社)等を参照のこと