連載 組織の壁を破る!CFT 活動のすすめ 第2 回 効果的なCFT 活動のポイントは テーマ設定やキーマン選出にある
CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)活動は、日産自動車におけるゴーン改革で導入されたこともあり、産業界で大きな注目を集めている。導入のコンサルティングサービスを展開する弊社も、関心を持った企業のトップから「導入に向けた相談」を受けるケースが増えてきた。ただしCFT活動は導入することが目的ではなく、導入してそれを活かして成果を出すことが目的である以上、“正しい導入の仕方”を実践することが、極めて重要になる。具体的にどうすれば成果の上がるCFT活動が導入できるのか。第2回目の今回は、CFT活動の立ち上げから導入プロセスのポイントを紹介する。
ミドル層へのヒアリングで正しく現状分析
効果的なCFT 活動導入の第一のポイントは、改革を推進するトップや経営幹部が、自社が置かれている経営状況、事業環境、社内事情などを正しく認識できるか否かにある。
現状を正しく認識するためには、“予備調査”と呼ばれる社内ヒアリングを実施しなければならない。トップおよび経営幹部のヒアリングはもちろんだが、本社ミドル層および現場マネジャー層への具体的なヒアリングが重要になる。
1人のヒアリング時間は40 ~ 60 分くらいで、質問内容は仕事の意思決定状況やスピード、その人が担っている役割と責任、いま現場で困っていることなどマネジメントのオペレーションに関することが中心になる。必要によっては質問内容が記載されたペーパーを非マネジメント層に属する数十人、百人単位の社員に配布して、回答してもらうこともある。
なぜこのような現状分析が必要なのか。大きな理由は2点ある。
1点目の理由は、自社の経営状況や事業環境に関する正確な事実を、トップおよび中心的な幹部社員間で情報共有する必要性があるからだ。私がトップや経営幹部に事業の現状を質問すると、大抵の人は「事業についてはよく把握している」と答えるが、より突っ込んだ質問をしてみると、ほとんどの経営者及び幹部は不十分な認識しか持っていないことが判明する。
「現場のことは全部知っていますよ」と胸を張る経営幹部に限って、現場でだれが何をしているのかは知っていても、現場で何が起っているのかをきちんと理解、認識している人は少ない。会社という組織においては、役職が上位になればなるほど視界は広くなるが、現場の事情に疎くなる。そうした経営幹部における現状認識の陥穽(かんせい)が経営判断や事業判断を下す際の障害となって、課題設定とその実現を狂わせていく原因となるのである。
したがってCFT 活動の導入目的を正しく設定するためにも、経営や事業、システム運営の現状を正しく認識することは避けられないのである。
広範囲のミドルにヒアリングを実施する理由の2点目は、ミドル層への意識改革を促す働きかけにある。つまり、ミドル層に自分たちが抱えている問題を改めて認識してもらう効果と、事業改革を推進する意思決定に参画している意識を持たせるためだ。経営幹部だけが改革の立案と決定に参画し、行動目標を上意下達で現場に押しつけるだけでは、現場の高いモチベーションを導き出すことは不可能だ。そうした場合、現場には“強いやらされ感”が漂い、表面上は改革に参画する行動をとっていても、能動的な目標達成意欲を喚起できないまま、改革活動が形骸化してしまう危険性が極めて高いのである。
実践のポイントとなるキーマンの選出
現場の状況を正確に分析したファクトをベースにした事業の予備調査を終了すると、続いてトップおよび経営幹部間で状況認識を共有する場が設定される。通常、CFT 研修やキックオフミーティングなど、必要な人に出席していただくために最も呼び込みやすい名称をつけ、まずは集まっていただく。そこではヒアリング分析を真ん中に置いてディスカッションが展開される。
幹部ミーティングにおける大切なポイントは、次の4点に集約される。
1.経営および事業に対する正しい現状認識を共有する
2.何が改革課題になり得るのかを掘り起こして、部門横断的な活動スキームを設定する
3.改革の必達目標を設定する